研究課題/領域番号 |
15H02569
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
川口 章 東海大学, 医学部, 客員教授 (30195052)
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研究分担者 |
猪口 貞樹 東海大学, 医学部, 教授 (60160008)
玉木 哲朗 東海大学, 医学部, 教授 (10217177)
奥 直人 帝京大学, 薬学部, 特任教授 (10167322)
北岸 宏亮 同志社大学, 理工学部, 准教授 (60448090)
山野 眞利子 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (80192409)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 人工酸素運搬体 / 臓器虚血 / 再灌流障害 |
研究実績の概要 |
本研究は、1) リポゾーム封入タクロリスム(LET/静岡県立大)、2)コバルトヘム(CoHeme/千葉大)、3) Hemo-Cyclodextrin(HemoCD/同志社大)及び国際連携4) Prolong Pharmaceuticals社(米)のPEGylated CarboxyHemoglobin Bovine (Sanguinate)などをふまえて、単に輸血用の血液代替物としてではなく(Kawaguchi AT, Artif Organs 2018)、循環・呼吸に起因する広汎で多様な病態に最適な人工酸素(O2)および一酸化炭素(CO)運搬体としての開発・実用化を進めることを基本課題としている。 2018年度は、1)LETを用いた部分脳虚血(出版準備中)、2) CoHemeの改変を引き続き行い(Neya, 2017, Etrahedron)、3) HemoCD (Kitagishi, 2018, Chemical Science)の量産が可能となり、4) Sanguinateを用いた心筋梗塞(A-study)や肺高血圧症の実験的検討を進めてきた。ヘモグロビン基盤の酸素運搬体(HBOCs)はヘモグロビンを含むため一酸化炭素(CO)担体として活性酸素の介在する多くの病変にも有効とされている。HemoCDを用いた一酸化炭素の体内動態の検索(Kitagishi, JACS 2017)をもとに、一酸化炭素供給が酸素運搬と同等またはそれ以上に重要なことも心筋梗塞モデル(Kawaguchi AT, 2018 Artif Organs)で示した。また、生体内酸素代謝動態の検出法として、近赤外光を用いた組織内酸素状態検出装置を作成し、その非侵襲性を活かして健常者や脳卒中患者に応用できる診断装置を試作し臨床応用に向けて実験を繰り返している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、薬学・理工学の研究者と協力し、国際的連携(前述の1~4)も加えて、循環および呼吸に起因する広汎で多様な病態それぞれに最適な性能を有する人工酸素・一酸化炭素運搬体を開発する。この目的で、共同研究ベースでそれぞれの特性を検討する契約を交わし、使用可能なサンプルを用いて実験的検討を進めてきた(先述の1~4)。また共同研究先のサンプルが入手でき次第、実験的研究に入る準備ができている。これら人工酸素・一酸化炭素運搬体はHemoglobinを基盤にしたものが多く(HBOCs)、酸素よりも低濃度で強力に一酸化炭素(CO)と結合し、その運搬・供給する性質がある。すなわち人工酸素運搬体でもあるが、人工一酸化炭素運搬体としての特性を生かした取り組みも進めてきた。その中でも、製品としてすでにCOと結合させて安定性を保っている ④ Prolong Pharmaceuticals社(米)のPEGylated CarboxyHemoglobin Bovine(Sanguinate)を用いたCO供給体(CORM)としての安全性・有用性を動物実験で検討している。その一環として心筋梗塞後の治療モデル(Kawaguchi AT, 2018 Artif Organs)で示し、更なる実験でその作用機序の解析を進めて(Kawaguchi AT, 2019 Artif Organs投稿準備中)、薬剤としての最適な利用法を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
研究方針として、人工酸素一酸化炭素運搬体およびその類縁体を用いて、呼吸・循環機能のうち、酸素摂取の「肺」、ポンプとしての「心臓」、回路としての「血管」に対する従来の直接治療と異なり、そこを流れる「血液」の側からの新たな体系的なアプローチを行う。従来の心・肺臓器不全に対する治療法は、臓器移植が進まないなか、人工臓器でも機械的補助を用いたものが主体となっている。すなわち心不全には人工心臓、呼吸不全には人工肺が用いられているが、その適応は限定され、極めて高価で、成績は低迷している。人工酸素一酸化炭素運搬体は、①末梢循環を改善し、②肺・末梢におけるガス交換を改善することで生物学的な循環・呼吸補助としての効果が期待される。ここでは心不全、呼吸不全の動物モデルで検討し、これら機械的および生物学的補助を併用して相乗効果も期待できる革新的な治療体系の構築を目指す。 人工酸素運搬体はHemoglobinを基盤にしたものが多く(HBOCs)、酸素よりも強力に一酸化炭素(CO)と結合し、その運搬・供給する性質がある。A)一酸化炭素運搬体としての特性を生かした取り組みを進める。中でも製品としてすでにCOと結合させて安定性を保っている ④ Prolong Pharmaceuticals社(米)のPEGylated CarboxyHemoglobin Bovine(Sanguinate)を用いたCO供給体(CORM)としての安全性・有用性を検討する。これと並行して、B) 小型人工心肺を用いて体外循環充填液としての効果を検討する。一方、臨床応用の実験的検討として、α) 脳梗塞後の脳還流障害の緩和、β)心筋虚血・再灌流における心筋保護剤として、γ)虚血骨格筋における効果(投稿中)および、δ)正常動物における運動負荷時の心肺機能への効果を検討する(投稿準備中)。
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