研究実績の概要 |
本研究は、当初の課題の通り、赤血球代替物として出血時の緊急輸血の可能性について検討した(Yoshiba,2014)。現在は、循環・呼吸に起因する広汎で多様な病態の改善に用いる人工の酸素(O2)運搬体としての開発・実用化へと変遷してきた(Kawaguchi, 2018)。リポゾーム封入タクロリスム(静岡県立大)やコバルトヘム(Neya、2017)の研究から、専らCOに着目し3)Hemo-Cyclodextrin(HemoCD/同志社大)及び4)Prolong Pharmaceuticals社(米)との連携によりPEGylated CarboxyHemoglobin Bovine(SG)を用いた研究を行ってきた。 2019年度は、量産が可能となった3) HemoCD及び4) SGを用いた心筋梗塞(Kawaguchi, 2018)、心筋虚血、心肺負荷耐容能及び肺高血圧症の実験的検討を進めている。生体内酸素代謝動態の検出法として、近赤外光を用いた組織内酸素状態検出装置を作成し、その非侵襲性を活かして健常者や脳卒中患者に応用できる診断装置を試作し臨床応用に向けた実験を行っている。一方、ヘモグロビン(Hb)基盤の酸素運搬体(HBOCs)はHbを含む微小粒子であるため、生体内で一酸化炭素(CO)に対する担体としてA)活性酸素やB)アポトーシスの介在する広汎な病態に有効とされている。HemoCDを用いた一酸化炭素の生体内動態の検索(Kitagishi, 2020)をもとに、CO供給がO2以上に重要なことを脳虚血再灌流モデル(Kawaguchi, 2020a)、心筋梗塞モデル(Kawaguchi, 2018)、心筋虚血再灌流モデル(Kawaguchi, 2020b)、心肺負荷耐容能(Kawaguchi, 2020c)及び肺高血圧症などで見出している。
|