研究課題/領域番号 |
15H02578
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
山崎 和久 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00182478)
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研究分担者 |
大野 博司 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, グループディレクター (50233226)
加藤 完 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, リサーチアソシエート (20632946)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 歯周病原細菌 / 腸内細菌 / 全身疾患 |
研究実績の概要 |
我々は歯周病原細菌Porphyromonas gingivalisを複数回口腔投与することで、腸内細菌叢の変動、腸バリア機能の低下、脂肪組織、肝臓における炎症性変化を誘導することを示したが、平成27年度はP. gingivalisの影響をさらに詳細に検討するため、単回投与実験を行った。その結果、わずか1回の投与で複数回投与で見られた変化と極めて類似した変化を示す事が明らかになった。さらに、肝臓における16S rRNA遺伝子の量的・質的解析を行った結果、感染群で細菌遺伝子の有意な増加を示すとともに、腸管と類似の群集分布を示した。これらのことはわずか1回の投与が腸内細菌叢と腸のバリア機能に影響を与え、全身的な炎症の上昇を誘導することを示している。また、これらの応答がP. gingivalisに特有な性質かどうかを調べる目的で、Prevotella intermedia口腔投与による全身炎症の影響を解析したが、P.intemediaの作用はP. gingivalisと比較して極めて弱いことが明らかになった。このことはP. intemediaの耐酸性の弱さに関連することが示唆された。 P. ginigvalis投与の代謝への影響を明らかにする目的でメタボローム解析を行った結果、糞便中ではLactobacillusが産生する脂肪酸に有意な変動が認められとともに、有意な上昇を示す短鎖脂肪酸があることが明らかになった。 以上のことより、P. gingivalisは特異的に腸管内で細菌叢を変動させ、腸のバリア機能を低下させて軽度な菌血症を誘導するばかりでなく、代謝にも影響を与えることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度中に予定していたP. gingivalis投与による標的組織である脂肪組織、肝臓における網羅的遺伝子発現解析は実施できなかったが、P. gingivalis単回投与実験の結果が論文として出版されたこと、P. intermedia投与実験の結果が得られ、学会発表にいたったこと、メタボローム解析も実施できたことから、概ね順調に進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には平成27年度に実施できなかった脂肪組織、肝臓のトランスクリプトーム解析を予定している。加えてP. gingivalis投与による腸管免疫への影響を解析するため、感染後に腸管粘膜固有層、腸管膜リンパ節、脾臓よりリンパ球を分離し、Th17、Tregを中心に表現型解析を行うとともに刺激培養を行って培養上清中のIL-17の測定を行う。IL-17は腸管免疫における中心的な炎症性サイトカインであり、歯周炎における全身的な炎症の誘導において鍵となる分子であると考えている。また、糞便中のIgA、血中のIgG, IgAの解析も行う。腸内細菌と強く結合するIgA抗体はPathobiontを認識していると考えられることから、IgAの結合度を指標にソーティングを行い、16S rRNA遺伝子解析を行ってP. gingivalisにより誘導される腸内細菌叢の変化をより詳細に解析する。 新たな実験系としてII型コラーゲン投与による実験的関節炎誘導モデルを作成し、P. gingivalis投与の影響を解析する。
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