研究課題/領域番号 |
15H02587
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
山下 信義 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 上級主任研究員 (40358255)
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研究分担者 |
谷保 佐知 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (00443200)
羽成 修康 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (10392648)
堀井 勇一 埼玉県環境科学国際センター, 化学物質・環境放射能担当, 専門研究員 (30509534)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 第三の極 / PFOS / ペルフルオロアルキル化合物 / POPs / 光分解 / インド / 中国 / PM2.5 |
研究実績の概要 |
第三の極における氷河・大気・土壌・植生に残留するPOPsの環境調査を行った。 中国(四川省、Ruoergai、北京、香港、Yunnan)、インド(Chennai、Pune、Gujarat)、4000m高山であるWolong山における調査を昨年と同様に行った。特に高山から流出した化学物質が蓄積している底泥試料の分析を行い汚染等状況を明らかにした。また比較のために、インド国内で最も汚染されているクム川、日月湖(台湾)、北浦(茨城県)でそれぞれ底質資料を採集し、化学分析を開始した。2013年に発見したPFASs自然環境中光分解反応の追試として、それぞれの地域で石英試験管に封かんした標準物質(PFOS関連物質、有機塩素系農薬、メチルシロキサン等)を指標とした長期間光分解反応を行い、高山の強紫外線環境下での特異的な分解反応を発見した。またPM2.5の起源を解析するため行ったナノ粒子サンプリングにより、ブラックカーボンが優占する東アジアと砂漠地帯の大気粒子の性状が大きく異なり、既存のサンプラーの信頼性が低いことが判明した。これに対する技術革新が必要となり、企業と協力し新しいナノ粒子インパクターを開発し、中国・インドカウンターパート他で検証、市販化も達成した。また本研究に参加する海外カウンターパートを拡充し、新たに南京大学、厦門大学、南開大学、国立台湾海洋大学、インド工科大学と共同研究協定を確立した。 本研究で得られている国際的研究成果に注目した多数の若手研究者の育成なども、JSTさくらサイエンスなど、国内科学技術プログラムと連携して進めることで、日本が世界をリードする環境科学研究の重要性を確固たるものとすることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した中国・インド現地調査と高山他における光分解試料の設置を達成、一部の試料を回収し化学分析を行った。光分解試料の一部については米国ワッズワースセンターと南京大学他で最新技術である飛行時間型質量分析計(TOFMS)を用いた分解産物同定を行った。また8カ国12機関が参加した昨年の北京研究集会に続き、つくばと南京で3月に国際研究集会を行った。これは代表者がボードメンバーであるダイオキシン国際会議(8月、ポーランド)のアジアプレミーティングとして開催し、同会議として初めてのオンライン会議に300名以上の参加者を得、本研究の重要性に注目した世界各国の専門家から多くのコメントを得た。これにより海外学術研究としての本研究の価値が一層高まった。また、研究成果の一部を14報の国際論文誌・プロシーディング、2報の著書として公表した。
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今後の研究の推進方策 |
中国・東アジアにおけるPM2.5/大気汚染研究は数多く存在するが、PM2.5の本当の起源であるインド・中東地域での砂漠粒子についてはほとんど知見が得られていない。表層的な大気汚染研究ではなく、大気中化学物質の構造変換も含めた中心コア研究として差別化を図る。インド5機関、中国5機関、香港2機関、韓国2機関、台湾、ドイツ、オーストラリア、ポーランド、米国参加による世界的研究チームによる総合解析を試みる。特に、本研究成果の一部は、新しいナノ粒子インパクターの市販化、ペルフルオロアルキル化合物のISO国際標準分析技術であるISO21675開発とも連携しており、純粋科学研究成果の実用化、社会実装まで含めた展開を試みる。
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