研究課題
2015年7、8月にインドネシア、スマトラ島の3地点の泥炭火災発生源近傍で捕集したPM2.5試料の化学組成は有機物が大半で、レボグルコサンとリグニン熱分解生成物ではシリンギル基を有する化合物群が支配的であり、無機イオン成分は重量比3%以下であった。一方、マレーシアのクアラルンプール市において捕集した1年間のPM2.5試料の総合的な化学成分濃度のデータセットを用い、統計モデルPMFおよび発生源の位置情報を考慮したPSCF解析から発生源寄与率を推定した。2種類の2次有機エアロゾル、化石燃料燃焼、泥炭火災、海塩、塩化物+硝酸塩の6つの発生源が同定され、年間平均PM2.5濃度に対し、泥炭火災は30 %の寄与を占めることが分かった。また、同市内の一般6家庭にて、室内空気中のPM2.5をICP-MS分析したところ、すべての家庭で極微量のCd, Pbが検出されたが、発生源は室外に存在すると推測された。マレーシアの年間PM2.5試料より、PM2.5液濃度が一定になるよう調整した水溶性及び脂溶性抽出液を各24サンプル準備し、マウスの骨髄由来抗原提示細胞に曝露、24時間後に細胞活性及びCD86の発現を測定した。その結果、11試料に細胞活性抑制作用が、12試料についてCD86発現上昇が認められた。一方、昨年度得た気道上皮細胞への影響と抽出液中のイオン成分、PAHとその誘導体濃度との相関分析の結果、硫酸イオン及びアンモニウムイオンが細胞活性の低下に関与していることが示唆された。さらに、CD86発現量は、13種類のPAH及びN誘導体濃度との間に有意な相関が認められ、影響がみられた5試料のうち4試料は,PM2.5濃度が非常に高いヘイズ期のサンプルであった。これらのPM2.5に含まれる成分が、気道上皮細胞の活性低下や抗原提示細胞のCD86発現上昇を介して呼吸器疾患の悪化に関与する可能性が示唆された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Atmospheric Environment
巻: 171 ページ: 111~117
10.1016/j.atmosenv.2017.10.009
http://aerosol.energy.kyoto-u.ac.jp/tohno/profile3001.html