最終年度にあたるこの2018年度は、非流ちょうなつっかえの自然さに、当該言語の膠着性の高低が影響するという仮説(膠着性仮説)を検証するという、本プロジェクトの中心的課題をおこない、結果を学会誌に掲載した。考察対象としたのは、日本語・韓国語・タミル語・トルコ語・ハンガリー語という5つの膠着語と、屈折語でありながら膠着語に近く膠着性が高いとされるシンハラ語、そして膠着語が低いとされる中国語(孤立語)・フランス語(屈折語)の、計8言語である。これらの自然会話を観察し、形態素内部で延伸型続行方式でつっかえる非流ちょうな発話があるかないかを調べた。さらに、個人差の影響を回避するために、疑似的な電話対話の発話を用いた知覚実験をおこない、形態素内部で延伸型続行方式のつっかえを持つ発話の容認度を調べ、いずれの調査においても、膠着性の高低が、この種の非流ちょう発話の自然さに影響することを示唆する結果を得た。現れやすい非流ちょう性発話のパターンが言語間で異なっていることには、従来、形態構造の複雑さが影響すると主張されていたが、大規模な電話コーパスを用いたその手法には長所だけでなく意外な短所難点もあることが本研究で明らかとなり、本研究ではこの方法論を踏襲せず、国際的な人的ネットワークに助けられ、各言語とも、我々独自の方法論での調査をおこなうことになった。今後もこのネットワークの中で、さらに精度の高い検証法を検討していく予定である。 その他、非流ちょう性観察の前提として、スピーチアクトについて総論的な考察を、オノマトペと感動詞の音調について各論的な考察を発表した。
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