本研究では過去3年に亘り、ネパール地域の地理特性、すなわちヒマラヤ山系から供給される地盤の特殊性に起因する地盤災害リスクの評価を目的とし、開発途上国内で実施可能かつ先進的な現場調査技術を活用して調査研究を実施してきた。平成29年度の調査は、アルマラ地区の地盤内部浸食に起因する地盤陥没現象、およびポカラ市街地の地震時における液状化リスクを対象とした。アルマラ地区においては、当該地域の地形から、頻発する地盤陥没の要因は隣接するKali川で近年行われていた採石工事によるものと考えられた。また、UAVによる数値標高モデルの作成と踏査の結果、現地は主にKali川による河岸段丘とその支川による扇状地から構成されていること、およびKali側の北側(陥没発生地域)には旧河道もしくは埋没谷が存在している可能性が示唆された。地形形成史の分析と過去の陥没孔の分布から、地盤陥没はこの旧河道に沿って発生することが考えられ、更にこれまで実施してきた表面波探査と簡易動的貫入試験の結果との比較から、将来の陥没発生個所をこれらのツールを用いて評価できる可能性を示した。 ポカラ市街地では、UNDPの報告で液状化発生の可能性が高いと懸念されていた地区の踏査と原位置試験を行った。その結果、当該地区は地下水面との比高が高く、液状化のリスクは非常に低いことが判った。過去の報告は地形区分に基づく評価であったが、本調査研究は原位置調査を踏まえたリスク評価の重要性を示す好例となった。
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