研究実績の概要 |
本研究は種多様性がとくに高いボルネオ島とスマトラ島でトランセクト調査を集中的に実施し、これらの地域の樹木多様性を定量的に記述すること、また、クスノキ科などについて東南アジア全種を対象に分類学的研究を進め、新種を記載し、チェックリストを発表するを目的としている。平成27年度は、2015年9月にスマトラ島での調査を計画したが、大規模な森林火災のために調査を延期し、2016年3月および10月(繰越予算を使用)にスマトラ島で調査を実施した。また、2016年1月にボルネオ島(サラワク州バリオ)で調査を実施した。また、インドシナ半島とマレーシアの種を対象にクスノキ科の分類学的研究を進めた。標本調査から新種比率が高いことが判明したベトナムにおいて、新種記載のための標本採集調査を実施した。スマトラ島リアウ州では3地点において100mx5mトランセクトを設置し、全種調査を行い、329種、285種、248種を記録した。また、クスノキ科タブノキ属、Nothaphoebe属などにおいて、新種候補を得た。サラワク州バリオでは予備調査としてトランセクトによらない標本採集を実施し、235種を記録した。クスノキ科において、属が確定できない新種候補を得た。クスノキ科シロダモ属、タブノキ属について、インドシナ半島とマレーシア・スマトラ島・ジャワ島・カリマンタンでこれまでに得た資料からrbcL, matK, ITS配列を決定し、分子系統樹と形態的特徴にもとづいて分類学的研究を行なった。その結果、シロダモ属では69点の標本が35種に分類され、うち22種(62%)は新種と判定された。タブノキ属では34種が認識され、うち27種(79%)が新種と判定された。これら新種候補のうち、花か果実の標本が採集され、形態的特徴づけが明確なシロダモ属2種、タブノキ属2種について新種記載の論文を投稿した。
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