研究課題/領域番号 |
15H02642
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
占部 城太郎 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (50250163)
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研究分担者 |
吉田 丈人 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (40447321)
山道 真人 京都大学, 生態学研究センター, 助教 (70734804)
土居 秀幸 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 准教授 (80608505)
片野 泉 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (90414995)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生態系 / 生物群集 / 湖沼 / 食物網 / 生物生産 / 光 / 栄養塩 / ストイキオメトリー |
研究実績の概要 |
自然界の生物間相互作用系や栄養動態への環境変化影響の解明には、生物群集全体を対象とした実験的アプローチが不可欠である。特に生態系への光投入量は、生物生産のエネルギー量として重要であるが、その多寡に伴う群集構造への影響は殆ど研究されていない。本研究は生物群集の環境応答の鍵となり、申請者が提唱して来た光―栄養塩バランス仮説を、国外にある大規模野外実験施設を用いることで実証することを目的とした。研究はコーネル大学が保有する大規模野外実験池施設(CURPF)を利用して行った。具体的には、2015年5月末に渡米し、ニュヨーク州イサカのCURPFにある0.1hの6池を対象に、遮光フローティングシートにより高遮光区(75%遮光)、中遮光区(50%遮光)、及び対照区(0%遮光)を設け、6月中旬~9月中旬にかけて、動植物プランクトン、ベントス、水質及び水草の調査と基礎生産測定等を定期的に実施した。3ヶ月にわたって遮光に対する生物群集の応答を観察したところ、光投入量が多いほど、植物プランクトン生物量はむしろ減少するという全く予期しない結果が得られた。このパラドキシカルな状況について詳細な解析を行ったところ、植物プランクトン生物量は池底の水草(シャジクモ)と負の相関があることが分かった。さらに動物プランクトンやベントスの解析、小規模は藻類応答実験から、水草による植物プランクトンへの負の影響は動物プランクトンによるグレージングや栄養塩をめぐる消費型競争では単純には説明出来ないことが分かったた。数理モデルを用いた解析から、水草の受光量を決める水深と栄養塩が鍵となることが示唆されたが、同時に植物プランクトンの成長を阻害するアレロパシー(干渉型競争)の影響も否定出来なかった。来年度は、この光のパラドクスともいうべき減少を解明するための実験も合わせて実施することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はコーネル大学が保有する大規模野外実験池施設(CURPF)を利用して実施し、予定どおり3ヶ月にわたる現場実験を実施することが出来た。実験の結果、上述したように当初想定していなかった結果が得られたがが、それは予期しない未知な現象を捉えるものであり、むしろより大きな成果に繋がると考えている。ただし、円高や米国での税制の変更などにより、滞在費や施設利用料が高騰したため、実験を行う池の反復数を減らしたり、分担者の滞在日数を減らすなど、作業量を減らさざるを得いなかった。しかし、反復数も最低限度は確保するなどの配慮を行ったため、研究内容を損なうほどの問題とはならなかった。
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今後の研究の推進方策 |
予定どおり、来年度(2016年)もコーネル大学の大規模野外実験池施設(CURPF)を用いて3ヶ月間の現場実験を実施する。特に、光-栄養塩バランスのプランクトン応答に加え、水草との拮抗関係を解明するためのサテライト実験も行う予定である。
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