研究課題/領域番号 |
15H02644
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山内 章 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (30230303)
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研究分担者 |
三屋 史朗 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (70432250)
犬飼 義明 名古屋大学, 農学国際教育協力研究センター, 准教授 (20377790)
槇原 大悟 名古屋大学, 農学国際教育協力研究センター, 准教授 (70452183)
仲田 麻奈 名古屋大学, 高等研究院(農), 特任助教 (70623958)
田中 利治 名古屋大学, アジアサテライトキャンパス学院(農), 特任教授 (30227152)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 可塑性 / 深根性 / 天水田 / 水管理 / 肥培管理 |
研究実績の概要 |
1、情報・データ収集及び整理 カンボジアにおいて、国内各地でこれまでに実施されてきた、品種適応試験、肥培・水管理試験、総合防除を含む病害虫防除試験、有機農法を含む栽培技術試験、さらに農家圃場での収量・病害虫発生調査などのデータの整理・解析を進め、農業技術指導を通じた総合防除などの取り組みが、生産性の増加と経費節減を通じて農家所得の向上に貢献していることなどを明らかにし、その結果を学会発表や、3報の論文として公表した。
2、可塑性に関わる評価と遺伝解析 ササニシキ、ハバタキ、ニッポンバレ、カサラスの4品種を用いて、土壌水分変動条件下での、節根伸長による硬盤貫入と深層での側根発達に関わる可塑性を評価し、ハバタキは一貫して、他の3品種に比べて、再潅水に対してより高い可塑性を発揮する傾向を示し、含水率が上昇し、貫入抵抗値が減少する時期に節根が硬盤層に貫入し、深層での側根発育が促進された。この可塑性が、吸水の促進を通じて、乾物生産の増加に貢献することを明らかにした。 さらに、耐旱性に関わるQTLを有し、KDML 105を主要な遺伝的背景として持つ染色断片置換系統群から3系統と、反復親のKDML 105を供試し、根の可塑性ならびにその乾物生産ならびに収量における、それらのQTLの役割を評価した。天水田条件下では、同系統はKDML 105より高い気孔コンダクタンスと乾物生産を示し、また収量も高かった。さらに、総根長によって評価した根系発達は、節根および側根の発育促進によって、同系統群の方がKDML 105より有意に大きかった。これらの結果は、同3系統が有する耐旱性に関わるQTLは、天水田条件下での根の可塑性を制御し、同条件下での吸水を促進することによって、高い乾物生産や収量に貢献している可能性を示唆する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
天水田の実態調査やそれに関する情報収集・整理に関する新しい地域への拡がりが、当初予定よりやや遅れているので、今年度は重点的に取り組む必要がある。一方、遺伝解析材料の作成や、その形質評価、またとくに、カンボジアにおける上述情報収集、整理についてはほぼ予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1、情報・データ収集及び整理 イネ遺伝資源ならびに天水田実態調査を、新たな共同研究機関を開拓しつつ、フィリピン(ビサヤ(ビサヤ州立大学)・ミンダナオ(ミンダナオ州立技術大学)、ラグナ(フィリピン大学、東南アジア農業高等教育研究センター(SEARCA))地方)、タイ(カセサート大学)、ベトナム(ベトナム国立農業大学)にも拡げて実施する。 2、QTL解析用集団の形質評価 Philriceにおいて、本研究チーム内で利用可能である、耐旱性が異なることが知られている親に由来した、KDML105 x NSIC Rc160の組み合わせで集団を作り、Philriceの圃場(天水田条件)において栽培し、遺伝子解析をさらに継続する。また、前年度使用した、KDML 105を主要な遺伝的背景として持つ染色断片置換系統群に加え、逆にKDML 105をドナーとした系統を作成中で、F3集団を供試して、KDML 105由来の断片の機能評価を行う。 3、可塑性(側根発育、通気組織形成)に関わる準同質遺伝子系統群の作成と機能評価 これまでの申請者らの研究で、根の可塑性(側根発育、通気組織形成)の大きいことが証明された、日本晴/カサラス 染色体断片置換系統群47番とPhilriceで育成されたNSIC Rc160(高収量水稲品種)から作成した準同質遺伝子系統群を供試して、可塑性(側根発育、通気組織形成)に関わるQTLの機能に関する圃場試験による解析を前年度から始めたので、それを継続する。
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