研究課題
1)土壌水分・硬度と根の可塑性との相互作用評価これまでの研究で、分枝ならびに深根性に関わる可塑性が異なることがすでにわかっている品種を用いて、根箱モデル実験において土壌水分ならびに硬度と、側根発育・土層別根系発育を非破壊的に追跡するとともに、深層根系による吸水速度を測定し、可塑性の機能的役割を定量的に示そうとした。その結果、土壌貫入抵抗値は含水率の低下に伴って増加した。乾燥処理を経た後の再潅水に反応して、IR64とその準同質遺伝子系統であるYTK313は、YTK191やIR64に比べて硬盤層を貫入した根数が多かった。同様に、硬盤層より下の層からの吸水量も多かった。YTK191やIR64は、湿潤区に比べ土壌水分変動区で乾物重を減少させたが、YTK313は維持した。これらの結果は、根の可塑性は、土壌が乾燥している時ではなく、再潅水によって土壌が湿ったときに発揮され、根は硬盤層を貫入することが示された。土壌水分変動条件下では、硬盤層を貫入した根は、硬盤層より上の土壌が乾燥しているときに吸水し、乾物生産に貢献すると考えられた。2)根の可塑性に関わるQTL機能の圃場試験による評価KDML 105をドナーとする染色断片置換系統群を用い、根の可塑性ならびにその乾物生産ならびに収量における、それらのQTLの役割を評価するための試験を計画したが、異常気象により雨季の始まりが大幅に遅れたことにより、実施できなかった。
3: やや遅れている
研究実績の概要に記述したように、計画した圃場試験が実施できなかった。一方、根の可塑性の機能評価実験に関してはほぼ予定通り進んでいる。
1)根の可塑性に関わるQTL機能の圃場試験による評価前年度で計画した実験を再度行う。すなわちその前に使用した、KDML 105を主要な遺伝的背景として持つ染色断片置換系統群に加え、逆にKDML 105をドナーとした系統を供試して、KDML 105由来の断片の機能評価を行う。2)可塑性(側根発育、通気組織形成)に関わる準同質遺伝子系統群の作成と機能評価これまでの申請者らの研究で、根の可塑性(側根発育、通気組織形成)の大きいことが証明された、日本晴/カサラス 染色体断片置換系統群47番とPhilriceで育成されたNSIC Rc160(高収量水稲品種)から作成した準同質遺伝子系統群を供試して、可塑性(側根発育、通気組織形成)に関わるQTLの機能に関するによる解析を前々年度から始めたので、根の伸長角度に関する可塑性も含めて、それを継続する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)
Plant Production Science
巻: 22 ページ: 168~179
10.1080/1343943X.2018.1561195
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