研究課題/領域番号 |
15H02650
|
研究機関 | 国立研究開発法人農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
吉本 真由美 国立研究開発法人農業環境技術研究所, 大気環境研究領域, 主任研究員 (40343826)
|
研究分担者 |
福岡 峰彦 国立研究開発法人農業環境技術研究所, 大気環境研究領域, 主任研究員 (40435590)
松井 勤 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (70238939)
小林 和広 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (90234814)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 群落微気象 / イネ / 高温障害 / 穂温 / 蒸散冷却 |
研究実績の概要 |
自立型群落微気象測定装置(MINCER)は、電源の確保が難しい発展途上国などの水田でも、群落内の気温と相対湿度を強制通風で精度良く測れる放射避けシールドシステムである。MINCERの一部パーツの生産中止に伴い、今後のモニタリングネットワークの維持のため次世代MINCERを改良し、製作を開始した。2010年度以降の予備的モニタリングネットワーク(MINCERnet)からの参画者は既にMINCERを数台ずつ持っているが、センサロガー等の部品の故障・劣化が見込まれたため、適宜部品の交換や修理、センサの検定を行った。MINCERの重要な機能である強制通風のためのファンモーターの磨耗・劣化程度について、全サイトで統一的に調べる手法を開発し、各国で調査を行った。センサロガーは全サイト新品に交換し、現地での微気象モニタリングを開始した。 2015年11月24~26日には、つくば市の文部科学省研究交流センターでキックオフ会議を開催し、研究代表者、研究分担者、連携研究者及び海外の研究協力者が一堂に会して、必要な打ち合わせと議論を行った。具体的には水田熱環境モニタリングや不稔率・品質調査の統一的手法についての提案と議論、目標達成に必要なサイト・品種の選定、具体的な圃場設計等についての打ち合わせである。キックオフ会議での議論に基づき、全サイト共通品種として、汎用性と入手しやすさから高温耐性中庸品種(IF64)、耐性品種(N22)、感受性品種(IR52)を選定し、種子の手配・増殖と実験圃場の整備を開始した。また、穂温推定モデル構築のために必要な風速と日射量を測定するための簡易気象観測システムを開発した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水田群落内外の微気象測定を継続するためのMINCER装置の更新を順次進めるとともに、キックオフ会議を開催して、測定方法の問題点や新たにモニタリングが必要な測定項目を挙げ、その対応について議論を深めることができた。これにより、参画者間での認識や手法を共有し、次年度以降の高温障害や微気象のモニタリングネットワークを十分に機能させる基盤が整った。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度開催したキックオフ会議などでの議論に基づき、10カ国のサイトにおいて高温障害と微気象モニタリングを開始する。MINCERによる群落内外の気温・湿度の他、穂温に影響を及ぼす日射量と風速を測定し、扱いが容易な小型熱画像測定装置で穂・葉の温度を手動でピンポイント測定するとともに、開花期にはデジカルカメラの自動撮影により開花時刻を客観的に同定し、開花時刻の変動による群落熱収支構造・穂温の違いを把握する。また、群落微気象に影響する葉面積指数や植生高、穂の高さなどの群落構造データ、稔実率や収量構成要素などを測定する。これらにより、多様な気候下の群落内外の微気象のギャップを把握し、穂温ベースの高温不稔リスクモデルを構築するための基本的なデータを収集する予定である。
|