研究課題
生物学的侵略機構の研究には自然分布域と侵入域の比較が不可欠である。アリは侵略種化したときの環境被害が極めて大きい。日本ではあまり知られていないが、近年北米で日本由来の複数の外来アリ種による環境被害が広がっている。しかし皮肉にもこれは日本の研究者にとって居ながらにして侵略アリの自然個体群情報を収集できる絶好の機会である。そこで、本研究では侵略的外来昆虫研究の日米のエキスパートが協力し、これら日本からの侵入者の生態・行動・遺伝情報を侵入先と自然分布域である日本国内で徹底比較する。さらに広大な国土を持つ米国で日本では不可能な野外実験を行う。既存の諸学説を整理しながら網羅的にテストすることで外来アリの侵略機構に関する一般論を導く。以上の目的で研究を始めたが、初年度冒頭に代表者の不測の病気が発覚し研究が遅延した。そこで、2年度目以降は遅れを取り戻すべく主として以下の研究を鋭意進めている。まず、米国側のカウンターパートと協力し、オオハリアリ、アメイロアリ、トビイロシワアリの各国個体群の基礎データを収集した。また多数外来アリが分布する沖縄では外来アリと在来アリの比較研究も進めた。これらの成果として、自然分布域の日本ではシロアリ専門食であるオオハリアリが侵略先の米国において食性が拡大している事実を海外誌に報告することができ、成果は一般メディアで多数報道された。また、一昨年から、テキサスのフィールドに研究代表者が研究室の学生らとともに訪問し実験のプロットを設置しており、H20年度にも6月に現地野外調査を行った。計3回実験操作前のデータを収集したが、しかし2017年夏に2度襲来したハリケーンのため野外プロットが水没し操作実験に進むことができなかった。H30年度にはプロットを再設置する予定である。また、H30年度には奇しくもヒアリの日本侵入が発覚し、本課題のメンバーは科学的情報発信に努めた。
3: やや遅れている
代表者の不慮の病気による初年度の遅れを2年度目でほぼ取り戻したが、3年度目には海外プロットが自然災害により破壊され再度研究が遅れた。研究30年度は海外フィールド調査にとくに力をいれ遅れを取り戻したい。
野外プロットを水没しなない場所に部分的に再設定する工夫をすることで対処可能と考えている。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (17件) (うち国際共著 6件、 査読あり 16件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件)
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