研究課題
1. ハノイコホートでのデーター・検体採集:ハノイの国立熱帯病病院(National Hospital of Tropical Diseases: NHTD)での患者のリクルートと臨床データー、検体(血漿、末梢血リンパ球)を採取した。2015年4月以降の新規感染者とこれまでリクルートした患者の各種臨床検査等のデーターを集めた。今年度は、新規無治療群は約100名の感染者をリクルートできた。2.治療コホート群の解析:治療中の患者で、安定期の患者は年1回のウイルス量測定を行っているが、この時点でウイルスが検出された症例に関しては、翌月にも採血を行い2回連続してウイルスが検出された患者の遺伝子解析を行い、薬剤耐性変異を明らかにした。3.無治療コホートの解析:新規リクルート患者のHLAタイピングを行い、今までに解析した患者と新規にリクルートした患者を合わせて、患者のリクルート時のCD4T細胞数、血漿HIVウイルス量(pVL)と各HLAアリールの相関を解析し、CD4T細胞数とpVLに相関するHLAアリールの解析を行った。その結果、一部のHLAとこれらの臨床指標との相関が明らかになった。また各HLAの存在に関連するHIV-1の変異を明らかにし、 303個のHLAに相関した変異を明らかにした。 新規リクルート患者から採取した末梢血リンパ球を用いて、3つのHIV蛋白(Nef, Gag, Pol)領域に対する17-mer overlapping peptideを作製し、これに対するCD8+T細胞の反応性を、ELISPOTアッセイを用いて調べた。それぞれのペプチドに対して反応している患者としていない患者との間に、CD4T細胞数とpVLに相関がみられるかを解析し、HIV-1の増殖抑制に関与しているT細胞が認識するペプチドを数種類明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
新規感染者のリクルートを約100名増やすことができ、今までのリクルート患者と合わせて、約400名の無治療患者の臨床データおよびHLAが蓄積できた。 これらの解析から、一部のHLAに関してCD4数、pVLと相関がみられるものが同定できた。また約400名の無治療患者のHIV-1シークエンス解析とHLAの解析から、303個のHLAに相関した変異を明らかにし、特にPOl領域の変異は、血中ウイルス量と有意に正の相関関係が、CD4数は有意に負の相関関係が認められたことから、HIV-1 A/EではPOl領域の変異の蓄積に関与するCTLが病態の進行に影響を与えていることが考えられた。治療コホートでは、薬剤逃避変異と解析と薬剤の副作用の解析を進めた。
コホート拠点であるハノイのNHTDでは、今年からすべての感染者に抗HIV薬の投与をすることを決めたため、無治療コホートの継続がかなり難しくなった。このため、この無治療コホートの継続観察を中止せざるをえなくなった。今後は新規感染者の初診時のみからの検体の採取、ウイルス量やCD4数の測定などの行い、cross sectionalな解析のみを無治療コホートに対しては行う事にした。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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