研究課題/領域番号 |
15H02675
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
弓仲 康史 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (30272272)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高速インタフェース / 情報通信工学 / 高速伝送回路設計 / 多値論理 / 高速信号伝送 / 波形等化技術 |
研究実績の概要 |
近年、VLSIシステムのGHzを超える高速化・低電圧化に伴い、伝送信号波形の劣化が深刻となりつつある。本研究は、携帯電話等の無線通信で用いられている高度な符号化・信号処理技術が、VLSIシステムの信号伝送の高性能化に適用可能な点に着目し、符号化・信号処理技術に基づき高速信号伝送を実現する配線主体のVLSIシステムの設計理論から回路実装に至る技術体系の構築を目的とする。具体的には、与えられた伝送路特性、データレート、消費電力等の設計仕様を満たす符号化の種類、波形等化アルゴリズム、回路実装方式を考慮し、通信分野の設計で用いられるゲインダイアグラムに基づくハードウェアの機能配分を行う。さらに、多値信号伝送のデータ誤り率測定の新規なテスト技術を確立すると共に、チップ間通信からサーバのバックプレーン等に至る応用展開を検討する。
今年度は特に、高効率な情報伝送方式のための符号化として着目されている多値信号伝送方式であるPAM-4信号に関し、理論解析、シミュレーション、実測による評価を行った。PAM-4信号のスペクトルダイアグラムに基づき、多値信号等の符号化信号が2値信号と比較して有利な伝送路条件を理論解析から導出すると共に、シミュレーションによる評価、さらに伝送路を模擬した評価基板を作成し、実際に2値信号とPAM-4信号を伝送することにより、波形劣化の比較を行った。さらに、PAM-4信号伝送の波形整形技術として、ディジタルリッチな波形等化技術であるTomlinson-Harashima Precoding(THP)に着目し、ハードウェア構成および要求されるビット数などを理論解析すると共に、原理実験による実測評価を行い、THP技術のPAM-4信号の波形整形の有効性と解決すべき課題を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、400Gbps信号伝送のための符号化技術として注目されている多値信号伝送方式であるPAM-4信号に関し、理論解析、シミュレーション、実測による評価を行った。多値信号は、多レベル信号表現によるノイズマージンの低下が課題とされていたが、例えば2値信号2bitを4値信号で表現することにより、半分のデータレートで情報を伝送可能となり、伝送路の帯域制限による波形劣化の影響を軽減可能である。PAM-4信号のスペクトルダイアグラムに基づき、多値信号等の符号化信号が2値信号と比較して有利な伝送路条件を理論解析から導出すると共に、シミュレーションによる評価、さらに伝送路を模擬した評価基板を作成し、実際に2値信号とPAM-4信号を伝送することにより、波形劣化の比較を行った。 さらに、PAM-4信号伝送の波形整形技術として、ディジタルリッチな波形等化技術であるTomlinson-Harashima Precoding(THP)に着目し、インターリーブ構成等のハードウェア実装方式および要求されるビット数などを理論解析すると共に、高速任意波形発生回路と高速オシロスコープによる実測評価を行い、THP技術のPAM-4信号の波形整形の有効性と解決すべき課題を明らかにした。 これらの研究成果は国際会議発表2件および、本分野で最も権威のある学会であるIEEE(米国電気電子学会)の論文誌に採録されるなど、計画通り、順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下の2点に関して研究を推進する予定である。 (1) 波形等化回路とAD/DA変換器の融合の検討:伝送路のローパス特性を打ち消すハイパス特性を有するイコライズ回路(アナログ回路が主体)の構成において、劣化した波形を直接高速A/D 変換し、ディジタル領域で信号処理する手法が提案されはじめている。特に、近年注目されているのは、送信部のディジタルフィルタで伝送路の逆特性を実現し波形等化を行うTomlinson-Harashima Precoding(THP)技術である。THP技術はModulo演算で振幅を折り返すことにより、伝送波形のダイナミックレンジを低減可能な方式であり、集積回路の信号伝送への適用を本申請者が世界に先駆けて提案している。本研究では、アーキテクチャレベルの新規な提案として、THP回路を送信回路のD/A 変換器中に埋め込むアナ・ディジ協調THP Embedded型D/A変換器の構成を検討する。さらにパイプライン動作、インターリーブ動作等により、スループットの向上を図る回路構成を検討する。 (2) PAM-4のエラーレート測定技術に関する基礎的考察:これまで研究実績が少ないPAM-4信号伝送のエラーレート測定のアルゴリズムを考察すると共に、エラーレート測定回路を高速FPGAボードで実装し、ノイズ、ジッタに対するデータ誤り率検出の高速テスト技術を新たに検討する。
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