研究課題/領域番号 |
15H02677
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
小林 和淑 京都工芸繊維大学, その他部局等, 教授 (70252476)
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研究分担者 |
古田 潤 京都工芸繊維大学, 学内共同利用施設等, 助教 (30735767)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ソフトエラー / FDSOI / バルク / スタックトランジスタ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,集積回路の微細化・低電力化にともない急速にその実現性が高まっている「もの」のインターネット(Internet of Things, IoT)機器の実現を図るものである.IoT機器は,常時動作が求められるため,低電力で長時間の動作が求められる.信頼性が高くなくては長時間動作できず,高効率にDC/DC変換できなければバッテリが大型化する.ここでは,その「信頼性, 高効率」に焦点を当て,長時間自律的に動作するIoTの実現のための基礎技術を確立する. 今年度は,課題1-1「SOIプロセスにおける極低電力高信頼対一時故障回路技術」と課題1-2「基板電位の変動が電力と一時故障に与える影響の評価」について評価を行った. 1-1: SLCCFFと呼ぶSOIに適したトランジスタをスタックした構造を用いた低遅延型フリップフロップを65nm バルクならびにFDSOIプロセスにて試作し,そのソフトエラー耐性の評価を行った.バルクでは基板電位によりスタックしたトランジスタの両方が影響を受けるため,エラー率はほとんど変わらない.一方,FDSOIではSLCCFFは通常のDFFの27倍のエラー耐性を示した.SLCCFFはJAXAの提案したSTACKEDFFを元に,遅延のオーバヘッドを17%削減したFFである.STACKEDFFとエラー耐性はほとんど変わらない. 1-2: 次の基板電位変動の異なる3つのレイアウト構造をそれぞれFFアレイとして実装し,そのソフトエラー率を評価した.構造A: 基板電位が固定,構造B: 基板電位変動可能でタップセルとシリサイドにより固定,構造C: 基板電位変動可能でタップセルのみで固定.中性子にて評価を行ったところ,バルクでは基板電位の安定性はソフトエラー耐性に影響を与えないが,FDSOIではA<B<Cの関係があり,おおよそC=2B=3Aの関係であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたとおり,当初計画で上げた3つの項目のうち2つは目標をクリアしており,ほぼ当初計画どおりである.課題1-3としてあげた「複数の記憶素子の同時反転を検知して警報を鳴らす技術」についても現在検討中であり,今年度中には何らかの実績を上げる予定である.
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今後の研究の推進方策 |
課題1-3および,課題2としてあげた,「10年間連続して動作可能な永久故障耐性の実現」についての研究を進めていく. 課題1-3においては,おいては多数決により多重化を行ない信頼性を確保しても, 複数のエラーが同時に起こった場合は誤動作を回避できない可能性がある. この回避策について検討を行う.複数のノードを同時に粒子線が通過した場合に同時反転が発生する恐れがあるため,基板電位を検知する以外の技術で同時反転を精度良く検出する技術を検討する. 本技術によりエラーとなる可能性のある場合を検知し, 警報を鳴らす. 警報によりIoTを自動的に再起動し, エラーにより動作が停止することのないようにする. 課題2においては,10年経つと部品を構成する材料が日光・温度・湿度などにより様々な影響を受ける.それらの経年劣化が生じても正常に動作を行う手法の検討を行う.もっとも簡単なのはあらかじめ劣化を見越した大きなマージンを見ておくことである.しかしそれでは,回路の電力や面積が大きくなる.ここでは,設計時のマージンをできるだけ小さくする手法と,万が一,劣化で一部が故障しても正常に動作し続けるための手法を検討する
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