研究課題/領域番号 |
15H02689
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
石原 進 静岡大学, 工学部, 准教授 (10313925)
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研究分担者 |
小林 祐一 静岡大学, 工学部, 准教授 (60373304)
高井 峰生 大阪大学, 情報科学研究科, 招へい准教授 (90277773)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高度交通システム / 自動運転 / 隊列走行 / 車車間通信 / センシング情報共有 / 手動・自動運転車両共存環境 / 可視光通信 / ジャミング攻撃 |
研究実績の概要 |
車車間通信に基づいて自律隊列走行を行う車両群に対し、通信妨害が行われた場合にも安全な走行を可能とする電波・可視光通信併用型の制御情報通信方式を設計、評価した。前年度までに評価した隊列制御情報の通信品質への影響に加え、隊列の行動への影響を含めて評価を進め、電波・可視光通信併用型の制御情報通信方式によって、車間距離5m, 60km/h程度での隊列走行において電波および可視光に対する妨害攻撃があったとしても衝突を十分に回避できる見込みが高いことを示した。 受信電波強度、送信電波強度等の無線インタフェースの物理的制御情報の利用、操作を伴う無線ネットワークシステム実装の評価をネットワークエミュレーション環境で可能とするためのLinux上で動作する仮想ネットワークデバイスを設計・実装し、実験によりその基本的動作を確認した。 車車間通信とLIDARによる周辺車両位置の検出が可能な車両(センシング車両)、ならびに通信とセンシングができない車両(非通信車両)の混在条件において、車車間通信によるセンシング情報交換によってセンシング車両による非通信車両の位置を把握する場合の位置推定精度について、様々なセンシング車両普及率、バックグラウンドトラフィックのもとでシミュレーションにより調査した。 車両の位置依存情報に関する要求の地理的分布を確率的表現によって率的に表現し、車車間通信によってそれらを効率的に共有する方法を設計し、シミュレーションによりこの効果を明らかとした。 事故防止と交通効率を効率化するための車両制御則について検討を進めた。前年度に実装した単一車線での速度制御モデルを修正・検証し、安全率と交通効率の両立が可能になる条件の検証を行った。車車間通信にもとづいた提案制御則が安全率・交通流量の改善につなげられる範囲を、異なる自律車両の割合に対して同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
事故発生を含む道路状況のモデリング、車両制御、通信プロトコルのシミュレーションモデルの構築、並びに複数メディアを併用した事故防止情報共有プロトコルの設計に関しては、概ね順調に進行しており、隊列走行制御に電波通信と可視光通信を併用した場合の電波・可視光での通信妨害攻撃の隊列走行への影響評価を行うに至った。また、センシング・通信可能車両と非通信車両の混在条件における位置推定精度の評価環境を構築し、センシング情報の共有プロトコル設計・開発の基本環境を整えることができた。また、Linux上で動作する仮想無線ネットワークデバイスの基礎的な実装を行い、センシング情報の共有プロトコルの実装を含めたエミュレーション環境による評価環境ができつつある。 事故防止と交通効率を効率化するための車両制御則の設計に関しては、当初は手動運転と自動走行車両のモデル構築に難航したが、2年目となる前年度にこれらのモデルができあがり、基礎的な評価を進めることができた。 一方で、既存の通信制御モデル(D-FPAV、ETSI DCC、定期的出力変更方式等)の車車間通信向けの代表的な動的送信電力出力変更、送信頻度変更手法)に関する、基礎的なシミュレーションモデルを構築していくこととしていたが、これらに関しては、進行が遅れている。また、人間工学の見知を取り入れることを本研究では狙っていたが、こちらも専門家との連携づくりが不十分である。
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今後の研究の推進方策 |
●事故防止情報共有プロトコルの設計: 車両の置かれた状態(車線、車両群における相対的位置、交差点や合流路との位置関係、受信電波強度、センシング情報等)にもとづいて、各車両による航行情報とセンシング情報の送信頻度、送信電力を制御するアルゴリズムの詳細設計を行う。 ●基本シミュレーションモデルの設計: 前年度にひき続き、シミュレーションベースのシステム評価ツールScenargieを用い、これまでにモデル実装が完了していないミクロなドライバ・車両行動モデル(合流、右折)、既存の送信頻度・電力制御アルゴリズム(UV-CAST, ATB)の実装を行う。各モジュールについて個別に開発・検証を行った後、各シナリオを用いた統合テストを行い、開発モジュール群全体の品質確保を行う。 ●事故類型シミュレーションシナリオでのシミュレーション実施: ASV(先進安全自動車)推進計画で検討されている典型的自己類型の内、追突事故、車線変更、右直事故に焦点を絞り、既存の送信頻度・電力制御アルゴリズム使用時における各車両の周辺状況把握状況に関してシミュレーションによって評価し、各手法の効果を明らかにする。また、前年度開発した仮想無線ネットワークデバイスの詳細実装を進め、無線ネットワークシミュレータと連携可能とし、上記の制御アルゴリズムのうち一部の実装の評価を可能とする。 ●事故防止と交通効率を効率化するための車両制御則の改良: これまでに設計した単一車線において車車間通信を交通効率と安全性改善につなげるための速度制御モデルを、2次元格子状の車線に拡張する。車車間通信の条件をより明示的にモデルに取り入れることで、より現実に近く多様性のある環境における速度制御法の設定と評価を行う。 ●人間工学専門家との連携づくり: 人間工学の専門家との連携づくりを進め、人間工学的見地を制御則、通信プロトコルの設計に反映させる。
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