研究課題/領域番号 |
15H02695
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
滝沢 誠 法政大学, 理工学部, 教授 (80188119)
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研究分担者 |
榎戸 智也 立正大学, 経営学部, 教授 (10360158)
Barolli Leonard 福岡工業大学, 情報工学部, 教授 (40312722)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エコ分散システム / 電力消費モデル / 計算モデル / サーバ選択アルゴリズム / 多レベル電力消費モデル |
研究実績の概要 |
種々の応用プロセスを実行させたときにサーバノード全体で消費される電力を測定した。ノードで実行されるプロセスを、CPU、通信、ストレージの各々の計算資源を利用する計算、通信、ストレージの三つの型に分類する。これらの各種プロセスを実際のノードで実行させたときのノード全体の消費電力を測定器により実測した。これらの実測データを解析することにより、ノードの消費電力を決定するパラメータを求めた。本年度の研究では、多コア・多スレッドの複数CPUを備えたサーバを対象として、電力消費モデルを研究し、消費電力とアクティブなコアとスレッドの関係を明らかにし、多レベル電力消費(MLPC)モデルを提案した。また、計算、通信、ストレージ型のプロセスが混在して実行されたときの電力消費モデルと各種プロセスの実行時間の関係を示すプロセス処理モデル(MLCモデル)を明らかにした。複数のノードで種々のプロセスを実行させたときの消費電力と実行速度を求めることのできるエコ分散シミュレータの研究開発を行うために、開発用サーバを導入した。 現在の情報システムの特徴は、大規模化、高信頼化、高性能化である。このために、複数のサーバにプロセス処理を多重化し分散させ、並列処理を行うことが行われてきている。本研究では、プロセスを消費電力の小さいサーバに移行させるための移行アルゴリズムと、プロセスの複数のレプリカを移行させる方式の研究を考案し、評価を行った。移行により、消費電力のみならず実行時間も短縮できることを示した。 分散型システムとしてのP2Pシステムでは、各ノード(ピア)は、システムの状態、必要な計算資源の所在等を、知人ノードとの要求応答通信により得る必要がある。このとき、要求・応答を基に信用可能性を決定することに加えて、新たに消費電力を低減できるノードをより信用可能性が高いとする方式をファジー論理を用いて行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数CPUのサーバ、PCを含めた種々のサーバで応用プロセスを実行したときの消費電力と各プロセスの実行時間の測定を行えた。電力測定器を新たに購入予定であったが、研究室内の測定器を利用し測定を行った。こうした実測データを基にして、サーバで各種プロセスを実行したときの消費電力を与える電力消費モデルであるMLPC(Multi-Level Power Consumption)モデルとプロセスの実行時間を与えるMLC(Multi-level Computation)モデルを確立できた。これらのモデルを用いて、エコ分散シミュレータの開発も行い、プロトタイプを完成することができた。本シミュレータを用いて、クラスタ内のサーバの中から、消費電力を低減できるようにサーバを選択するために考案したアルゴリズムの評価を行い、アルゴリズムの改良を行っている。プロセスの移行方式についても研究をすすめ、他のサーバに移行するかしないかの条件を明確にし、移行アルゴリズムの評価を行っている。信用可能性については、新たにファジー論理を用いて、知人ピア(プロセス)の信用可能性を決める方式を考案し、評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究計画に基づいて電力消費モデルを発展させる。まず、CPUの種類に加えて、HDD、SSD等の各種のストーレジを備えたサーバでプロセスを実行させたときのサーバの消費電力の実測を行う。実測データを基にして、電力消費モデル(MLPCモデル)の改良、改善を行う。また、サーバに加えて、センサ・ノード等の各種ノードにつても電力消費モデルを検討する。 初年度に研究開発したエコ分散シミュレータのプロトタイプを改良し、本研究課題で研究する種々のサーバ選択アルゴリズム、プロセス移行アルゴリズムの評価を行う。評価に基づいて、各アルゴリズムの改良を行う。低電力化アルゴリズムでは、仮想マシン(VM: virtual machine)を用いてプロセスを移行させる移行アルゴリズムの研究を行なう。プロセスを個々に移動させるのではなく、VM単位に移行させることにより、アルゴリズムの計算量を低減しかつ移行負荷の低減をはかる。 プロセスの多重化に加えて、データを複数のサーバに低消費電力となるように多重化する方式の研究を行う。サーバの消費電力を低減できるようにデータのレプリカのコーラム(quorum)の構成方法を研究する。 ピアプロセスの信用可能性については、ファジー論理を用いて研究を行う。特に、ピア間で無線通信を行う場合を想定して、信用可能性の高いピアがメッセージを中継することを考える。このとき、信用可能性を決定する要因としてピアの消費電力を考える。
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