研究課題/領域番号 |
15H02698
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
村尾 和哉 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (50609295)
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研究分担者 |
寺田 努 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (70324861)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ユビキタスコンピューティング / センサ情報処理 / スマートホーム |
研究実績の概要 |
ユビキタス技術の発展により,環境にセンサを配置し,人の行動パターンに応じて機器を制御する空間が登場してきており,環境内の人物や動作の認識技術の重要性が高まっている.本研究では,トイレットペーパーホルダ,シャワーヘッド,ダイニングテーブルなど非電化製品に安価かつ小型のセンサを搭載して非電化製品のセンサ化を実現し,多変量解析や機械学習によって使用者識別および使用者状態推定を行い,住宅および住人を管理・制御するシステムの構築を目的とする.画像認識や音声処理を用いず,また機器の携帯や装着も必須としないため,本システムがユーザに与える心理的・肉体的負担は小さく,子供から高齢者までを対象とした持続可能性の高いシステムである.平成28年度は個別の空間におけるシステム(以下,個別システム)の問題点抽出および方式改善を行なうとともに,個別システムを統合したシステムの構築に向けて1,2および3に取り組んだ. 1.個別の空間における人物識別および状態推定 個別システムの完成に向けて,動作特徴量および識別アルゴリズムを確立する.具体的には,動作が行われている区間のデータを抽出し,区間全体あるいは一部から特徴量に変換して,事前に取得した教師データから作成した識別モデルを用いて個人識別を行った. 2.情報統合による住人情報データベースの構築 各個別システムから得られる個人識別情報および個人状態情報と,若手研究Bの成果である赤外線センサから得られる移動情報を統合し,住人のトラッキングおよび近い将来の行動予測を行う機構を構築した. 3.住人情報に基づく機器制御および情報提示 消費電力と住人のQoLの両面を考慮した機器の制御手法および住人にとって有益な情報提示内容・提示手法を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,トイレットペーパーホルダ,シャワーヘッド,ダイニングテーブルなど非電化製品に安価かつ小型のセンサを搭載して非電化製品のセンサ化を実現し,多変量解析や機械学習によって使用者識別および使用者状態推定を行い,住宅および住人を管理・制御するシステムを構築を目的としている.
平成28年度は個別の空間におけるシステム(以下,個別システム)のトイレットペーパホルダ,冷蔵庫,ダイニングテーブルにおける使用者識別および使用者状態推定システムの問題点抽出および方式改善を行なった.
平成27年度に構築した個別システムに加えて,シャワーヘッドや扉冷蔵庫などの個別システムを構築した.また,構築した個別システムは市民向けイベントにおいてデモンストレーションを行うなどの性能試験や実証実験を行っており,これは当初の予定では平成29年度第2Qに行う予定であった段階に入っており,これらのことからも本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年以降は,各個別システムの問題点抽出および方式改善を行うとともに,個別システムを統合したシステムの構築に向けての取組みを推進する.すべての個別システムを1つの住宅やオフィスに組込むには配線工事などを含めて多大な時間と費用を要するため,組込み前に統合システムのベータ版を平成29年度末までに構築する.ベータ版構築には実験住宅に既に組み込まれている機材や研究室内を改良した擬似住宅を用いる.また,本研究の基盤となる現在推進中の若手研究Bの経験から,センサの設置には電源とネットワークの配線が障壁となるため,Arduinoなどのマイクロコントローラ基板やRaspberryPiなどのシングルボードコンピュータ,モバイルバッテリ,無線コントローラを用いて,電源や情報コンセントがない場所でも容易に設置可能かつデータ採取可能なセンサデバイスを実装する.二度に渡る実証実験および性能評価を経て,本システムの有効性を確認し,様々なタイプの空間に適用可能なパッケージ化を行い,研究を完了する.実証実験に関しては住宅を用いて,実際の生活をシミュレートする.このシミュレーションでは実際の生活に沿ったデータを採取するために5人で最低でも10日間に渡って行う.研究代表者らは既にこの住宅において住み込みでデータ採取を行っており,正解データの記録方法などのノウハウを有している.本研究での提案機構は住宅内で完結するものを想定しているが,将来的には大規模な知識データベースを保持する遠隔地と住宅を接続した,より高度な住宅の実現を考えている.
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