研究課題/領域番号 |
15H02704
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
尾下 真樹 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (20363400)
|
研究分担者 |
栗山 繁 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20264939)
向井 智彦 首都大学東京, システムデザイン研究科, 准教授 (10432296)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 動作解析・評価 / 機械学習 / 可視化 |
研究実績の概要 |
本研究では、スポーツ選手・舞踏家・技能職者などの熟練者の動作の特徴を明らかにし、動作トレーニングに役立てることを目的とする。実際の熟練者と素人の動作データを解析し、得られた特徴量から動作のコツを機械学習法により識別することで、熟練者の動作の評価のための定量的な要素(特徴量)を明らかにする。また、その研究成果に基づいて、抽出された特徴量を分かりやすく可視化することで、動作のコツを効果的に伝達する手法や、訓練者の動作と熟練者の動作の違いを分かりやすく提示する手法、コツを新たな動作に移植する手法等を開発する。本研究は、スポーツ選手・舞踏家・技能職者などの専門家の協力を得ながら実施する計画である。 これまでの研究により、動作データを解析することで得ることのできる基礎的な特徴量(複数部位の位置・向きや関節回転などの運動学的な特徴量)の計算手法や可視化手法を開発した。また、練習者の動作の問題点を的確に指摘するため、複数の手本動作における各特徴量の範囲を正規分布によりモデル化し、練習者動作の特徴量のうち手本動作モデルとの差異が大きいものを判定できるようにした。これらの成果をもとに、テニスのショット動作のフォーム練習システムのプロトタイプを開発し、評価実験によりその有用性を評価した。また、専門家の協力を得ながらスポーツ(テニス)・ダンス(能、日本舞踊)の動作データの収集を継続して行った。機械学習手法により、大量の特徴量の中から対象動作に応じて動作の良し悪しを決める基準となる特徴量やその条件を自動的に識別するための手法について、決定木や重回帰分析を利用した解析手法によって姿勢の良し悪しを評価する手法を開発した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、前年度に引き続き、動作データを解析することで得ることのできる基礎的な特徴量(複数部位の位置・向きや関節回転などの運動学的な特徴量)の計算手法や可視化手法の研究を行った。また、練習者の動作の問題点を的確に指摘するため、複数の手本動作における各特徴量の範囲を正規分布によりモデル化し、練習者動作の特徴量のうち手本動作モデルとの差異が大きいものを判定できるようにした。これらの成果をもとに、テニスのショット動作のフォーム練習システムのプロトタイプを開発し、評価実験によりその有用性を評価した。ここまでの成果をまとめて国際会議(Cyberworlds 2018)で論文発表を行い、またその拡張版の論文を論文誌に国際投稿中である。 また、訓練時に様々なバリエーションの可視化を提示するための基盤技術として、モーションキャプチャデータの特徴を学習して類似した動作データを人工的に生成する手法の研究に着手した。動作の特徴は識別用の深層ネットワークとして実装し、敵対的な生成型のネットワーク(Generative Adversarial Network, GAN)を導入し、任意にサンプリングされた潜在変数から特徴が共通する動作データを生成する機構を開発した。この成果は国内でCG関連分野では最大規模の学術会議であるVisual Computing で口頭発表した。さらに、この成果に加えて、Wasserstein Auto Encoder を導入した動作データの自動生成機構を開発し、GANに基づく生成機構との比較を検証した研究成果が、画像電子学会の論文誌に掲載された。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は、本研究課題の最終年度にあたるため、これまでに開発してきたシステムをまとめて、最終評価を行う予定である。30年度までは主にテニスのショット動作を対象としたシステムを開発してきたが、別の種類の動作に対しても評価実験を行う予定である。また、多くの利用者にシステムを試用してもらう機会を設けて、幅広い評価を行いたいと考えている。 前年度までに開発した基礎的な運動学的動作特徴量に加えて、動作データから解析することのできる他の特徴量の計算やその可視化手法を追加し、熟練者と初心者の動作の違いを表す上で有効な特徴量を探っていく。また、機械学習手法により、大量の特徴量の中から対象動作に応じて有効な特徴量を自動的に識別するための手法の研究を進めていく。 また、これまでの研究により、手本となる熟練者の動作にもある程度の幅があり、どの程度のずれまでが許容されるかという範囲を含めて手本動作をモデル化することが、練習者の動作の問題点を指摘したり、練習者の動作に合った手本動作を提示したりするために必要であると分かった。そこで、手本動作のモデル化や生成についても、継続して研究を行っていく予定である。 実用的なトレーニングシステムを実現する上での課題となる、手本動作と練習者動作の間の体格の違いを補正するための動作変形手法や、手本動作と練習動作の特徴量の違いを分かりやすく可視化するための手法について、継続して研究を進めていく予定である。 また、トレーニングシステムにおいて動作の差異を言語的な表現で伝達する(例えば「もっとゆっくりと」「もっと力を抜いて」など)ために必要となる、動作特徴量と言語的な表現の関係を明らかにするための研究も、継続して行っていく予定である。
|