研究実績の概要 |
近年,社会心理学のみならず,認知科学や神経科学の分野においても社会性認知に対する関心が高まっている.社会性認知は自己と他者について適切に認識する能力を基盤として成立していると考えられる.本研究では,こうした社会性認知を支える低次のメカニズムとして多感覚統合に着目し,以下の点から研究を推進する.(1)他者に関する認知能力である感情認知を支える多感覚統合メカニズムの文化差の形成過程を検討する.(2)感情認知を支える多感覚統合メカニズムの個人差の形成過程を検討する.(3)自己に関する認知能力である自己主体感を支える多感覚統合メカニズムの文化差及び個人差を検討する.2年目である本年度は,項目(1)および項目(2)について検討を進めた. (1)感情認知を支える多感覚統合メカニズムの文化差 本項目では,他者認知の一つである感情認知に着目し,感情認知を支える多感覚統合メカニズムの文化差について,視聴覚感情認知実験を通して検討する.本年度は,視聴覚感情認知実験の課題遂行中の視線を計測し,注視部位と声依存性の関連について検討した.具体的には,発話動画刺激を用いて注視部位を計測し,視聴覚統合における声依存性が注視部位によってどのように変化するかを検討した. (2)感情認知を支える多感覚統合メカニズムの個人差 本項目では,感情認知を支える多感覚統合メカニズムの個人差およびその形成過程について検討する.今年度は,視聴覚感情認知実験を日本人の成人および子どもを対象に実施した.得られたデータについて,感情認知の個人差について,他の認知課題およびパーソナリティ特性と関連づけて分析した.
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