研究課題/領域番号 |
15H02728
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
金田 豊 東京電機大学, 工学部, 教授 (20328511)
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研究分担者 |
古家 賢一 大分大学, 工学部, 教授 (10643611)
片岡 章俊 龍谷大学, 理工学部, 教授 (20528682)
苣木 禎史 千葉工業大学, 先進工学部, 教授 (50284740)
羽田 陽一 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (80647496)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 3次元音響 / 波数領域処理 / マイクロホンアレイ / 頭部伝達関数 / 室内インパルス応答 / 音源位置 / 雑音抑圧 / 残響抑圧 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、音響空間場において主要な音源情報(音源位置、原音情報)とアンビエントな音情報(残響音、周囲雑音)とを区別しながら収音し、それらを再合成することで、ユーザが仮想的にその空間内を移動しながら音を聴取するシステムの提案を目指している。平成28年度は、対象とする音場の基本特性取得の効率化、虚音源を排除する音源位置推定、音場の可視化による音源抽出、ヘッドフォンおよびスピーカによる音場再現について検討を行った。 音場の基本情報取得では、音場の変動要因である熱や空気の流れや非定常雑音などが存在する環境下で安定して空間音響特性を把握する手法について検討を進めた。その結果、連続周波数上で白色スペクトルを持つ純白色擬似雑音を提案し、音場の時間軸変動に対するロバスト性を確認した。また、非定常雑音の重畳を検出し、該当部分のみの再測定を行う効率化した音響特性把握方法を提案した。さらに、多ch同時インパルス応答の測定法の高精度化の検討を進め、多重M系列信号、多重TSP信号の両方に対して音源数が増加したときに測定精度が音源配置に大きく依存することを実測により明らかにし、音源配置によるインパルス応答の精度に関する知見を得た。 音源位置の推定と抽出においては、音源が2つ以上あるとき2つの異なるマイクロホンアレイを用いて方向推定を行うと虚音源が表出する課題に対し、真の音源位置を音源間の相関関係を用いて推定する手法を考案した。また、波数領域において、直線アレイによって収音した音をヘッドフォン再生信号へ変換する方法を提案した。さらに、仮想空間内を移動するシステムの基礎検討を行い、頭部の前傾、左右の傾きでの移動の意図を検出するモジュールを作成した。被験者を用いた実験では、違和感の少ない加速・減速の手法を検討した。合わせて、スピーカアレイによる再生エリアを制御する手法についても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
音場の基本情報取得においては、室温変動や雑音などの外乱にロバストな手法の提案を行い、さらに複数個の音源が存在する場における多ch同時インパルス応答推定法の問題点の把握、および複数個の音源の同時音源位置推定、音源情報取得を行える見通しを得た。さらに、収音した信号からヘッドフォン再生信号へ波数領域上で変換する手法を提案するとともに、仮想空間内においてヒトが移動しながら聴取するシステムについても検討が進んだことから、当初の目標に対して概ね順調に推移していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は波数領域およびビーム領域処理による3次元空間場収音とヘッドフォンによる再生方式との統合、評価を進め、さらにスピーカ再生についても検討を行う。 具体的には、音源の選択的収音を目的として、音響条件の異なる位置に設置した複数のアレイを用いた音場収音の検討および空間領域でのポストフィルタによる音源抽出を引き続き行う。また、音場収音再生シミュレーションや性能評価に必要なインパルス応答および残響時間を短時間で精度よく測定するための新しい測定方法の検討を加速する。特に、音源の動きや受聴者の動きに合わせて滑らかに音像を移動させるためには、あらゆる位置のインパルス応答を連続的に測定しておく必要があるが従来の技術では困難であった。そのため、まず多チャンネル同時インパルス応答測定法を用いて、できるだけ多くの空間的に離散的なインパルス応答を測定し、次に数種類の波数領域の基底関数により測定したインパルス応答を展開することによって、空間的に補間されたインパルス応答を推定する手法を開発する。合わせて、純白色擬似雑音の高精度化、全オクターブ帯域で一定のSN比を確保する測定法の確立を目指す。また、音源位置推定においては、反射音抑圧効果を有するSBPH法を用いた直接音源の位置推定、直接音波面の可視化などの検討を進める。 ヘッドフォン再生方式の検討においては、ユーザの聴取したい動きに合わせて任意の位置の音圧を再現することを目指しているが、直線アレイと球面アレイ双方にて奥行き方向まで含めた音場内での自由なウォークスルーが行えるデモシステムの構築を行い、さらに身体動作と仮想空間移動の対応モデルを構築し、仮想空間での移動と視覚および聴覚刺激がヒトに酔いなどの身体的負荷を与えないか否かを検討する。
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