研究課題/領域番号 |
15H02736
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
榎堀 優 名古屋大学, 情報学研究科, 助教 (60583309)
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研究分担者 |
原沢 優子 名古屋市立大学, 看護学部, 准教授 (70303774)
間瀬 健二 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (30345855)
柳澤 理子 愛知県立大学, 看護学部, 教授 (30310618)
小松 万喜子 愛知県立大学, 看護学部, 教授 (50170163)
高橋 佳子 中部大学, 看護実習センター, 助手 (70782027)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ウェアラブル / 褥瘡予防 / 衣類型センサ / 布センサ |
研究実績の概要 |
本研究は、圧力布センサで体圧計測ウェアを作成し、離床中の褥瘡予防を充実させる研究である。平成28年度の計画は、昨年度に完成した体圧計測ウェアを用いた実証実験およびデータ収集であった。 まず、名古屋市瑞穂区にある特別養護老人ホームに27年度版の体圧計測ウェア(ベスト型)を持ち込み、施設スタッフに施設内利用可否をヒアリングした。結果、システムコンセプトや着用方法などへ賛同が得られた一方、27年度版の生地では硬すぎて被験者の褥瘡発生を助長する可能性などが指摘された。また、27年度版は上衣のみであり、褥瘡発生リスクが高い下半身を計測できる下衣の提供も打診された。 上記結果を受け、より薄型の布センサを用いた上下の揃った体圧計測ウェアの研究開発へ年度の主目標を変更した。その結果、より薄型の布(28年度第1試作)が完成し、それを用いた体圧計測ウェア(28年度版)が平成28年末に完成した。本ウェアはプレスリースおよびウェアラブルEXPO2017にて公開し、新聞4件に報道されるなど好評を得た。また、合わせて1件の特許を申請した。 当初計画のデータ収集に替わり、28年度版ウェアの完成後に20名の健常者(20~40台, 男女比1:4)の体圧分散クッション利用時の仰臥/側臥位の体圧データを、衣類型デバイスの基礎性能検討データとして収集した。本件は、ウェア完成時期との関係から年度末における実施となったため、解析は29年度に繰り越しとなった。 この他、ヒアリング時に指摘のあった計測回路の小型化にも着手し、厚み方向に39%, 体積比で22%の削減を実現した。また、布の更なる薄型化についても検討し、28年度第2試作を構築した。ただし、第2試作は半年の撚糸期間を経て作成できたのが10 mと極少量であり、大量生産の目処は立っていない。同布にて29年度に2着のフラグシップモデルを作成し、性能を検討予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の計画は、昨年度に完成した体圧計測ウェアを用いた実証実験およびデータ収集を進めることであったが、施設へのヒアリングの結果を受けて、より薄型の布を用いた体圧計測ウェアの開発へ方針を変更した。特別養護老人ホームでのデータ収集は実現していないが、代わりにより薄型の布センサ及びそれを用いた高性能な体圧計測ウェアが実現できた。 また、後期高齢者ではないが、健常者20名 (20~40台, 男女比1:4)のデータを収集しており、衣類型デバイスの基礎性能検討の準備が整った。ただしデータ収集が新しい体圧計測ウェア完成後の28年度末であったため、その解析は29年度へ繰り越されている。 この他、ヒアリングの結果を受け、当初予定になかった計測回路の小型化を実施している。厚み方向に39%, 体積比で22%の削減を実現した。また、布の更なる薄型化についても検討し、フラグシップモデルの布センサの作成にも成功した。そのため、29年度に2着ほどフラグシップモデルの体圧計測ウェアを作成できる運びとなった。ただし、本布センサは半年の撚糸期間を経て作成できたのが10 mとごく少量で有り、大量生産の目処は立っていない。 上記のとおり、平成28年度の研究は、年度初期に実施した特別養護老人ホームでのヒアリング結果を受けて実情に沿った方向へ変針し、成果を残している。結果、当初予定とは別方向であるがより実情に沿った方向へ十分に前進したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度のヒアリング時に判明した懸念として、施設を利用している後期高齢者らの体圧計測ウェアに対する着用忌避感がある。体圧計測ウェアを用いた長期計測実験の難しさが改めて確認された形である。これに対しては、看取り期などにおける各位の好みの衣類の着用を推進するという方針などからも同様の懸念が噴出している。 従って、長期間のライフログ取得および見守りというアプローチに拘らず、体圧計測ウェアを他の方向で褥瘡予防へ活用することも平行して検討する。具体的には、看護師候補生の教育用デバイスとしての活用である。体圧計測ウェアは今までのデバイスと異なり、体表に掛かる圧力を直接可視化することができる。そのため、今まで計測できなかった体圧分散クッションを入れたときの体表にかかる圧力なども計測可能であり、効果的に除圧が出来てるかなどを判定できる。これらは看護師の速育など活用可能であると見込まれる。平成29年度では、本方向性も合わせて検討する。 また、同懸念を受け、施設における後期高齢者らのデータ収集および実利用性の検討実験においては、複数の体圧計測ウェアを構築して短期間で終了する方向へ再度方針を転換する。次段落でも述べるが、平成28年度末より新たに衣類メーカの協力を得て計画を進めており、6月を目処に5着の量産を実現し、その後に実施予定である。 この他、体圧計測ウェアの洗煉化として、衣類メーカの協力の下、体圧計測ウェアの構造の再検討を実施予定である。平成27年および平成28年度版では、布センサの制限から背面部および臀部の圧力データのみが取得可能であった。これを着座時の左右方向への傾斜にも対応できるように両脇部および左右太もも側面部まで取得可能な構成に更新予定である。
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備考 |
プレスリリース: H29.1.11:「知の拠点あいち重点研究プロジェクト(I期)」の成果を活用し、体にかかる圧力が測定可能な衣服や車椅子を開発しました。 新聞掲載: H29.01.12: 化学工業日報, 中日新聞, 中部経済新聞, H29.01.17: 日刊工業新聞
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