研究実績の概要 |
2016年度の成果は以下のとおりである. (1) 昨年度までに得られた異ドメイン間対応づけ法に関する知見が, 単一空間上の近傍分類タスクに応用可能かについて考察し, 予備実験に寄ってこの手法の有効性を確認した. (2) 線形写像に関して得られた前年度までの成果が, 非線形写像についても適用可能かを検証するための準備の一環として, 構造化データに対する非線形写像の学習に取り組んだ. 構造化データの対象として, 自然言語データ (文), および, 生物情報処理分野におけるタンパク質 (アミノ酸配列) という系列データを対象とし, それらの表現ベクトルを多層人工ニューラルネットワークを用いて最適化し, 系列に隠れている構造を捉える, という試みを行い, 2 件の論文として公表した. (3) 新しいアプリケーションとして, (文抽出型) 文書自動要約タスクに取り組んだ. この問題を, 要約したい文書 (多数の文の集合) と, 人間がその文章に対して作成した要約 (少数の文の集合) への線型回帰問題として定式化した. 文集合を各文に含まれる単語表現ベクトルの関数と定義した上で, これら表現ベクトルをパラメータとみなして最適化を行ったところ, 既存の単語表現ベクトルをそのまま用いた場合に比べて, 要約精度が向上することを確認した. この定式化は, 要約文書空間への対応問題とみなせ, 前年度に取り組んだ回帰に基づく異ドメイン対応づけ法の応用にも繋がると期待している. (4) 畳み込み (convolution) など非標準的なベクトル演算を用いる知識グラフ埋め込みに着目し, 分析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は, 新しいアプリケーションを模索し, 次年度の発表に向けた準備を行った. ほぼ準備が整ったため, 全体としては概ね順調といえるが, 研究成果の公表という点ではいささか遅れている面がある.
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今後の研究の推進方策 |
本年度行った実験結果・蓄積したデータに基いて, 追加の分析・実験を行った上で, 次年度成果を公表する. さらに, 近年注目を集めている, 知識グラフ埋め込みに着目して研究を進める.
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