研究課題/領域番号 |
15H02759
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研究機関 | 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 |
研究代表者 |
川鍋 一晃 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 主幹研究員 (30272389)
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研究分担者 |
兼村 厚範 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 人間情報研究部門, 研究員 (50580297)
平山 淳一郎 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究員 (80512269)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 確率的情報処理 / 機械学習 / ブレインマシンインタフェース |
研究実績の概要 |
本研究は、脳活動から意図を読み取るBMIは、最初に数時間の訓練が必要であることに加え、経験者でも利用直前に数十分間の較正用データ収集が精度維持のため不可欠という実用上の難点を解消するため、実環境脳活動データに共通して現れる成分のモデリングと安静時計測の利用により、都度の較正を必要としないBMIとそれに用いる機械学習法の確立を目的としている。本年度は、以下の3点に取り組んだ。第1に、脳内ネットワーク結合の個人間および状況間の変動の理解を容易にするために開発した直交結合因子法(OCF, Hyvaerinen et al., 2015)をさらに改良して、モジュール構造およびそのモジュール間結合の変動を同時推定するモジュール結合因子法(MCF, Hirayama et al., 2016)を開発した。本手法を大規模安静時fMRIデータに適用したところ、モジュール構造として①安静時に活動するDefault Mode Network (DMN)、②外部刺激を処理する感覚系ネットワーク、③Saliency ネットワークが抽出され、①-③間と②-③間の結合が反対に変動するという結果も③が①と②のネットワークを切り替えているという知見に合致した。第2に、本研究の転移学習アプローチ(Morioka et al., 2015)で用いている辞書学習法に基づき、近赤外分光画像(NIRS)データから日常生活行動を判別するための時空間解析法を開発した。実データで従来法と同等の性能を保ちつつ、課題関連脳活動とアーチファクトのパターンが分離でき、容易に解釈できる結果が得られた(星野他、2017)。第3に、少数データかつ高ノイズの複数の脳波データに対してさまざまな深層学習法を適用し、従来法の性能を上回ることを示した。特に時間情報がある課題に対してはLSTMが有効であることがわかった(野沢他、2017)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに開発した手法をNIRSデータに適用するとともに、深層学習法による新しい脳活動解読法を開発し、複数の脳波データに対して良好な結果を得た。さらに、直交結合因子法を改良したモジュール結合因子法により、安静時脳機能ネットワークの既知のモジュールや、これまでの知見に合致するモジュール間の依存関係を同定することができ、神経科学の知識を転移学習に取り入れる準備も整いつつある。以上を総合して、転移学習BMIを拡張・高度化する研究を多角的に進められたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度開発した特徴量抽出法や時空間パターン解析法などを組み込み転移学習法を高度化する。ATRが所持する複数モダリティの脳活動データベースや、外部で公開されている脳計測データベースに適用してその性能や利便性を評価する。
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