研究実績の概要 |
脳活動から意図を読み取るBMIにおける実用上の難点として、安定して使えるようになるまでに必要な長い訓練時間、および精度を保証するために必要となる利用直前の較正用データ計測があげられる。本研究では、多人数の脳活動データを用い、脳活動に共通して現れる成分のモデリングと安静時計測の利用により、 都度の較正を必要としないBMIとそれに用いる機械学習法の確立を目的としている。最終年度は、異なる状況間で汎化する脳波・生体信号の特徴量解析法に関して研究を進め、以下の5点に取り組んだ。第1に、安静時脳機能ネットワーク状態の推測に適した脳波特徴量を構築するため、生成モデルが陽に計算できる深層学習法SPLICEを提案した(Hirayama et al., ICML2017)。脳波-fMRI同時計測データに適用したところ、うつ病に対するfMRIニューロフィードバックで用いられている信号に相関するSPLICE成分が得られ(Hirayama et al., rtfin2017)、共同研究者が脳波フィードバックにおける有用性検証を始めている。第2に、脳波信号の共分散行列の揺らぎを表現する確率モデルを導入し、情報幾何学に基づくロバストなBMI特徴量抽出法を構築した(Samek et al., 2017)。第3に、筋電データの日間変動の較正を行う転移学習法を開発し、運動の認識精度が向上することを示した(Kanoga et al., ICIT2018, EMBC2018b)。第4に、準シミュレーションを用いて、信号再現性の高い筋電由来ノイズ除去法を適用することでかえってBCIの識別精度が落ちる可能性があることを示した(Kanoga et al., EMBC2018a)。第5に、多変量自己回帰モデルを用いた脳波信号の欠損値補間法を提案した(Kanemura et al., EMBC2018)。
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