研究課題/領域番号 |
15H02763
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
清水 正宏 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (50447140)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 心筋細胞 / 非線形振動子ネットワーク / 相互引き込み現象 / ロコモーション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,機械刺激のフィードバックを利用した生体・機械融合ロボットの自律分散制御である.このロボットは,コラーゲンゲル薄膜上に培養される筋細胞群の協調的な収縮によって移動運動を行う.筋細胞はロボットのアクチュエータであると同時に,機械刺激センサの役割を果たす.ロボットは,自己の動きによって能動的に筋細胞への機械刺激をつくり出し,筋細胞の空間配置や収縮能を自己改良する.これは,細胞の機械刺激応答による自己組織化能力を直接ロボットに埋め込む新奇な技術である.身体の動きを機能的に連動させるために,筋細胞群の収縮を非線形振動の協同現象としてモデル化し自律分散的に制御する.本研究は,バイオロボットの制御技術を創出するのみならず,次世代再生医療に必要な生体素材の知能化にも貢献する. 平成27年度においては,機械刺激応答により自己組織化する心筋細胞リズムのモデル化を目指した.機械刺激と心筋細胞群の空間配置の変化の関係を実験的に明らかにし,結果に基づいて,バイオロボットを駆動する心筋リズムを非線形振動子ネットワークによってモデル化することを目指した.具体的には,配向性コラーゲンシート上で心筋細胞を培養し,PDMSと組み合わせることで,心筋細胞群の相互作用を活用したロコモーション生成を行った.心筋細胞は,配向性コラーゲンシート上で培養され,心筋細胞振動子であると同時にコラーゲンシートのベンディングを利用してアクチュエーションを行う.このような心筋細胞振動子アクチュエータを複数組み合わせることで,振動子間の相互作用が起こるように設定し,複数の心筋細胞振動子アクチュエータの協働的な駆動によりロコモーションが自発的に起こる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年11月,心筋細胞ロボットの作成にあたり,心筋細胞ロボットの駆動実験を試みたところ,当初の予想に反し,PDMSシリコン膜の膜厚が,非線形振動子ネットワークの相互利用に影響していることが明らかとなった.研究遂行上,この現象の本質を見極めることが不可欠であることから,心筋細胞振動子の測定実験を行う必要が生じた.しかしながら,心筋細胞の足場となるコラーゲンシートの長さを変えて培養した.すると,コラーゲンシートの長さを変えた場合に,心筋細胞群の拍動リズムに遅れが生じることが明らかとなった.これにより,心筋細胞ロボットの作成にあたり必要不可欠な要素を明らかにすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた平成27年度の予定,また,変更後に行った実験における,心筋細胞ロボットのロコモーションと心筋細胞の拍動リズムの位相変化に関する実験結果に基づき,心筋細胞ロボットのロコモーションの多様化に取り組む.ここでは,コラーゲンシート上に培養された心筋細胞をロボット駆動のためのアクチュエータとする.これまでの成果に基づき,アクチュエータの形状,数,配置により変わる相互作用を通して,自発的に多様なロコモーションが生成されることを目指す.
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