研究課題/領域番号 |
15H02766
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
坂本 真樹 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (80302826)
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研究分担者 |
松田 隆秀 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (40190475)
高玉 圭樹 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (20345367)
大島 千佳 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), その他 (10395147)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 感性情報学 / 感性計測評価 / オノマトペ / 医療面接支援 / 診断支援 / システム開発 |
研究実績の概要 |
高齢者は医師などの医療従事者に体調や気持ちを「ずきずき」「ずーん」といったオノマトペ(擬音語・擬態語の総称)で主観的に表現することが多いとされるが、言語による主観的な訴えは客観的に評価することが困難なため、検査に依存した診断が行われがちだった。本研究では、高齢者の主観的な訴えや感性を尊重する医療面接支援システムを開発し、日常の医療面接でオノマトペが重視される枠組みを構築することを目的としている。この研究目的を達成するために、平成27年度は、高齢者にも負担なく直感的な操作で素材から感じることを伝えられるオノマトペ分布図操作ツールの開発を行い、若年者と健常高齢者の触感覚の違いの有無を把握するための、被験者実験を実施した。その研究実績は、実験準備段階から連携した研究分担者松田との共著論文として、研究分担者高玉が主催する国際会議セッションで発表した。また、オノマトペと比喩を活用した医療面接支援システムについても、研究分担者松田との共著論文として、国際ジャーナルや国内学会で発表した。研究分担者大島とも、オノマトペ分布図操作ツールと触素材を用いて、健常高齢者が各素材から想起するオノマトペを取得する実験を実施し、健常高齢者と若年者の間の感じ方の違いについて明らかにした。さらに、研究分担者松田は、総合診療外来受診患者において、それぞれの患者が持ち合わせる症状、特に痛みに関して患者自身のオノマトペを用いて医療情報として診断推論への有用性を検討するにあたりプロトコールの作成に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者坂本は、高齢者にも負担なく直感的な操作で素材から感じることを伝えられるオノマトペ分布図操作ツールの開発を行った。そのツールを用いて、若年者と健常高齢者の触感覚の違いの有無を把握するための、被験者実験を実施し、健常高齢者と若年者の素材の手触りの感じ方の違いを把握することができた。同様の実験を研究分担者大島とともに実施することで、より大規模な実験に向けた準備ができた。オノマトペと比喩を活用した医療面接支援システムについても、研究分担者松田と打ち合わせを重ね、総合診療を受診する患者に症状をオノマトペで回答してもらう問診用紙を作成した。また、研究分担者高玉と共に2回にわたり臨床研究講習会に参加し、打ち合わせを重ね、平成28年度に患者を対象とした実験を実施するための準備も整った。さらに、研究協力者長谷川と共に、研究代表者及び分担者とで認知症患者を対象とした実験へと進むための準備を進めた。以上のように、平成27年度までの進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
・平成27年度は患者を対象とした実験を実施するには至らなかったが、平成28年度は、研究分担者松田の所属研究機関の附属病院で、通常診療において患者から得られたオノマトペによる情報を取り込んだ診断推論の過程を評価するためのプロトコールを作成し、研究実施計画書を完成し、倫理委員会に申請する。医療面接支援システムを用いて、実際の患者が用いるオノマトペの解析を行えるように進める。 ・平成27年度の触素材を用いた実験で、どのような素材を用いるかが課題であることがわかったため、実験刺激の選定について、再度見直しを行う。選定した実験刺激で実験を実施するためのシステムのプロトタイプを作成する。倫理委員会の承認後、速やかに実験を開始する。
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