研究課題
本年度は,生きた細胞に導入され機能しうる以下4種の人工分子デバイス群のデザインと評価を行い,これらデバイスを実際に細胞内に導入するための手法の開発を行った.具体的には,1)膜チャネル: デザインされた人工DNAチャネルについて,その構造に依存したチャネル電流のON/OFF挙動が確認された.2)座標制御デバイス:齋藤Gで新規な立体構造を示すRNAナノデバイスの設計と開発を進め,構造の評価を行った.3)膜造形:DNAオリガミ製デバイス単体での改良では変形挙動が予想より小さく,脂質膜の変形効果を得るために強固なデザインへと変更を行った.4) 膜リンカー:リポソームを用いた脂質膜内外からの合体デバイスを構築し,その評価を行った.そして,これら開発中の分子デバイスを一括して生きた細胞内部に導入可能とする手法として,細胞サイズ巨大巨大リポソーム(GUV)-細胞融合法の開発を進めた.GUVに内包させたマイクロメートルサイズにおよぶ人工物質を,生きた細胞内に導入するための条件として,その物理化学的特性と受け手の細胞側の条件を調査した.その結果,人工物のみならず,細胞内小器官をも導入することが可能であることを示す事ができ,現在論文作成中である.DNAナノテクノロジーにより設計された人工分子デバイスのモデルとして,破壊によって蛍光強度の増大を示すDNAデバイス分子を構築し,細胞内に導入し評価を行った.その結果,分解に至る時間を見積もることができた.一方で,分解のメカニズムについては精査が必要であることから,引き続きモデルを用いた評価を行う予定である.
2: おおむね順調に進展している
評価系は装置含めて確立しており,分子デバイスの設計・改良は順調に進んでいる.肝心の生きた細胞内への分子デバイス導入に関して,GUV-細胞融合法で導入されたデバイスを蛍光ラベルによって細胞内トラッキングした結果,分解されるまでの時間を見積もることが出来た.また,この際の分子修飾によって局在先を規定可能であることが示唆されている.これらの結果より,本課題はおおむね順調に進展していると考えている.
引き続き,人工分子デバイスセットの設計と評価(1-4):細胞環境での動作が確認されたものから,分子デバイス間の連携をすすめる.本年度の研究の結果,DNAナノ構造の細胞内での安定性が低いため,架橋および機能性分子修飾による安定化を試みる.また,分子デバイス間の連携を進め,効果をより明確化するための大規模集積化を行う. 細胞の特徴的な構造との局所的な相互作用を強化するための設計を調査する.具体的には微小管アプタマーを調査したが,安定して動作しなかったことから,引き続き細胞内局在安定化を実現するための設計を調査する.また生きた細胞内部へ導入する前段階として,細胞モデルとしてGUVを用い,分解を抑えた状態で人工分子デバイスを導入して機能試験を行う.
すべて 2016 2015
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