研究実績の概要 |
平成29年度においては、次の4つの研究を進めた。 ・HLA class I の A, B, C 遺伝子に加え、class II のDPA1、DPB1、DQA1、DQB1、DRB1の5遺伝子の型を決定するベイズモデルを構築した。結果、DPA1, DPB1, DRB1 では4桁の型で実験したサンプルにおいては100%の精度を達成した。また、DQA1, DQB1 においては、それぞれ95.8%, 94.4%という高い精度であった。加えて、自然免疫に関連するMICA, MICBにも対応した。 (2)HLA型の決定とHLA領域の体細胞変異同定を同時に実行するための統合ベイズモデルを構築した。そのプロトタイプを用いて、サンガーシークエンスによって変異の存在を確認したサンプルを用いて検証実験を繰り返している。この成果は、現在論文としてまとめている。 (3)HLAに結合し、T細胞を誘導するがん抗原(neoantigen)を予測するためのデータ解析パイプラインを構築し、GitHubにおいて公開した。このパイプラインは、変異型ペプチドと野生型ペプチドのHLA分子に対する結合強度を予測することができる。 (4)RNAシークエンスデータからT細胞受容体のパターン(レパトア)を解析した。その多様性について、特にPanCancerプロジェクトにおいてWGSとRNAシークエンスデータが揃っている肺がんを中心に解析し、T細胞受容体レパトアの多様性とPD-L1などの免疫チェックポイント分子の発現との関係、がん抗原との関係を比較検討した。 (5)がんに対する免疫監視のプレッシャーの強さを定量する統計量を、免疫プレッシャーを受けていないと考えられる偽遺伝子領域の変異情報を用いることで構築した。その結果、免疫プレッシャー強さは、患者の予後情報といくつかの癌腫で相関することを見いだした。
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