研究課題/領域番号 |
15H02776
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
関嶋 政和 東京工業大学, 学術国際情報センター, 准教授 (80371053)
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研究分担者 |
秋山 泰 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (30243091)
平山 謙二 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (60189868)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | in silico創薬 / IT創薬 / in vitroアッセイ / 抗寄生原虫治療薬 |
研究実績の概要 |
本申請課題「in silico とin vitro の融合によるトリパノソーマ原虫治療薬探索」では、未だ治療満足度が低く、医薬品の貢献が求められるアンメットメディカルニーズの高い疾患である、顧みられない熱帯病への貢献を目指す。NTDsの中で、リーシュマニア症、シャーガス病、アフリカ睡眠病といった疾患を引き起こす寄生原虫に関しては、Nifurtimox とBenznidazole が治療薬として知られるが、それぞれ40 年以上前に開発された薬であり、重篤な副作用が報告されているほか、慢性期に効果が薄いなどの問題点が知られており、新規の治療薬の開発が待たれている。本研究は、平成27年度から4年間で行う。平成27 年度は(1)トリパノソーマ原虫の遺伝子ネットワーク解析手法の構築と標的蛋白質の探索、(2)ドッキングシミュレーション手法の改良、(3)抗寄生原虫活性、細胞毒性評価についてデータを蓄積について研究を行った。具体的には標的蛋白質を探索するためのiNTODBに対してトリパノソーマ科寄生原虫3種の配列、蛋白質の立体構造、哺乳類のオルソログとの配列相同性、遺伝子ノックダウンのデータを遺伝子ネットワークにより結びつけ、よりシステムズバイオロジーの観点から標的蛋白質を探索することを可能にしている。また、分子動力学シミュレーションを行うことで、熱揺らぎを考慮した分子動力学シミュレーションとドッキングシミュレーションを組み合わせた手法について実施することで、熱揺らぎを反映したドッキングシミュレーションを実現した。また、抗原虫活性・細胞毒性評価について、抗寄生原虫活性の定量的評価法を確立し、インハウスの化合物についてデータ蓄積を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)現在iNTRODBに収集されているトリパノソーマ科寄生原虫3種の配列、蛋白質の立体構造、哺乳類のオルソログとの配列相同性、遺伝子ノックダウンのデータを遺伝子ネットワークにより結びつけた。ブルーストリパノソーマ、リーシュマニア、クルーズトリパノソーマに関する遺伝子(それぞれ8712, 19602, 9591)と、炭水化物代謝、エネルギー代謝、脂質代謝、ヌクレオチド代謝、アミノ酸代謝、糖鎖生合成と代謝、補因子とビタミンの代謝、テルペノイドとポリケタイドの代謝のパスウェイの関連をデータベース上で検索可能にした。 (2) スーパーコンピュータTSUBAME2.5を用いて分子動力学シミュレーションを行うことで、熱揺らぎを考慮したドッキングシミュレーション手法についてある程度の確立が出来た。PDB(Protein Data Bank)に登録されているようなrigidな構造に対するドッキングシミュレーションなどでは生体内での蛋白質の熱揺らぎを考慮することは難しいが、分子動力学シミュレーションとドッキングシミュレーションなどを組み合わせることで、ある程度のエントロピックな効果も取り込むことを可能にした。 (3) 抗原虫活性・細胞毒性評価について、抗寄生原虫活性では、i)マウス由来のホスト細胞と1000個のクルーズトリパノソーマのトリポマスチゴート(錐鞭毛型)を4日間培養し、ii)化合物を添加し、iii) 4日後、AlamarBlueを添加し、蛍光強度でトリポマスチゴートの減少度合について定量的評価法を確立し、アステラス製薬から提供されたインハウスの化合物について実験を行った。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 現在iNTRODBに収集されているトリパノソーマ科寄生原虫3種の配列、蛋白質の立体構造、哺乳類のオルソログとの配列相同性、遺伝子ノックダウンのデータを遺伝子ネットワークにより結びつけたデータベースを利用し、創薬標的になりうる蛋白質についてリスト化を行うとともに、リスト化された標的蛋白質の評価法について検討を行う。 (2) 熱揺らぎを考慮したドッキングシミュレーション手法についてこれらを実際の寄生原虫に関わる蛋白質に適用し、リガンドの獲得を進めていく。また、可能なものについてはX線結晶構造解析により本手法についての検証を行う。また、開発したシミュレーションによるドッキングとドッキング結果の原子間相互作用プロファイリングによる評価手法について開発を進めていく。 (3)確立した蛍光強度でのトリポマスチゴートの減少度合についての定量的評価法を用いて、(2)によって提案するin silico由来の化合物を含め評価を進め、抗原虫活性値と細胞毒性値を求めていく。
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