研究課題
本研究では,移動しながら能動的に視覚刺激を受ける経験の蓄積により質の高い知識を獲得できるようなナビゲーション環境の構築を最新の認行動知科学の知見に基づいて構築する.能動的なナビゲーション行動は,多くの情報が取り交わされるインタラクトの形式であり,意識的/無意識的行動を含む複雑系の特徴を有する.そこで,本研究では,人間の日常的な意識的/無意識的行動選択過程をシミュレートできる認知機構 MHP/RT を基盤に据え,全方位景観提示による鑑賞ナビゲーション体験により個々の鑑賞者が質の高い知識獲得のできる環境を大地の芸術祭を事例として構築し,検証する.今年度は,昨年度に第6回大地の芸術祭にて収集した景観観賞用のコンテンツ素材を用いてナレーションの有無と提示タイミングが鑑賞者の印象形成に及ぼす影響を解明するための予備実験を行なった.観賞実験用の映像は4つの作品に対して作成した(「日本に向けて北を定めよ」「農舞台」「カクラ・クルクル・アット・ツマリ」「絵本と木の実の美術館」).上映時間は2分~3分,ナレーション時間は20秒~70秒であった.上映は,和歌山大学観光デジタルドームシアター(直径5mのドームスクリーンに,専用に設計された魚眼レンズを装着した4Kプロジェクターにより,360度の映像(全天周映像)を投影できる施設)にて行なった(担当:和歌山大学).上映条件は,ナレーションなし,映像上映前・上映中にナレーション提示,の3条件であった.11人の被験者を対象として鑑賞行動中の視線を記録した.視線計測には,Tobii Glass(メガネ型の視線計測装置,昨年度購入)を利用した.また,4つの映像鑑賞後に印象に関するアンケートを収集した.実験結果は,ナレーションのタイミングによりナレーションの内容が鑑賞行動時の注視行動が変化し,それが印象形成に影響することを示唆した(担当:長岡技術科学大学).
2: おおむね順調に進展している
今年度は,大地の芸術祭コンテンツを使った鑑賞実験の実施,結果の分析を行うことが大きな目標であった.質の高い鑑賞行動・印象評価データを得るためには適切な実験環境を準備することが必要であった.また,実験のノウハウを得るということも狙った.当初,十日町プラネタリウムでの実験を計画していたが,当該施設の投影装置が鑑賞行動に影響を及ぼす可能性があること,ならびに,映像コンテンツは和歌山大学で作成しており和歌山大学観光デジタルドームシアターにて投影して鑑賞実験を行う方が効率がよいと判断して,和歌山大学に場所を変更して実験を行なった.結果として,2017年6月に開催されるVR関連の国際学会での発表論文(採択率30%)の内容となる実験結果が得られ,実験実施方法が確立できたと考えている.長岡技術科学大学に隣接する十日町プラネタリウムでの実験も選択肢となるので,次年度以降の研究を加速することができる.
研究計画の変更はない.また,研究を推進する上での問題点もない.
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 4件)
Proceedings of the 12th International Joint Conference on Computer Vision, Imaging and Computer Graphics Theory and Applications (VISIGRAPP 2017)
巻: Volume 2: HUCAPP ページ: 67,74
巻: Volume 2: HUCAPP ページ: 17,26
日本教育メディア学会研究会論集
巻: 42 ページ: 43,50
情報処理学会研究報告
巻: Vol.2016-CLE-19 ページ: 1,6