研究課題/領域番号 |
15H02791
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
有川 正俊 東京大学, 空間情報科学研究センター, 特任教授 (30202758)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地域の知 / 地理情報システム(GIS) / ジオメディア / 時空間データベース / エコシステム / 永続性 / 生涯学習 / 位置情報サービス |
研究実績の概要 |
平成29年度は、各地域コミュニティが保持している古地図およびアウトリーチ用のまちあるきイラストマップ、また歴史的資料をスマートフォン上でGPSと連動して現場で閲覧できるモバイル自習システムを開発し、柏市および東京西部地域を対象に開催したワークショップを通して、提案した枠組みの実証実験を行った。具体的には、柏市では、柏の葉アーバンデザインセンターおよび柏歴史クラブの支援を受けて、まちあるきワークショップを開催し、独自開発したまちあるき用コンテンツを利用していただいた。対象者は、主に小学生とその両親であり、地域の地理と歴史をGPSを使って効率良く学習でき、良い結果が得られた。また、青山学院大学地球共生学部の学部学生の演習授業では、当研究プロジェクトで独自開発した、まちあるきコンテンツ開発用アプリを使って、町田、長津田、淵野辺、相模原、橋本の5つの地域の歴史の自習ができるスマートフォン用のまちあるきコンテンツを約2ヶ月程度かけて、学部学生が独自に開発し、一般公開するワークショップを行った。参加した学部学生たちは、地域の歴史を分かりやすく学習できるモバイルアプリを創造的に開発し、自らも地域の知に高い感心を持つようになった。このワークショップは、スカイプの遠隔ビデオ会議システムを用いて、東大柏キャンパスと青山学院大学淵野辺キャンパスとをつなぎ、学部学生へ講義や指導を行い、アクティブ・ラーニングおよび反転授業を適用して実施し、良い教育環境を構築できた。今回開発したアプリの1つである「柏ウォーク」は、H30年度からの放送大学の講座「日常生活のデジタルメディア」第6回「ジオメディア」(2018年5月19日(土)16時45分~17時30分)にも取り上げられ、アナログ地図、歴史情報、スマホ、GPSを利用した新しい形態のフィールドワーク型生涯教育環境を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究プロジェクトでは、(1)データ寄付、(2)時空間情報管理、(3)永続性の実現という3本の柱を中心に研究を進めており、おおむね順調に研究を進行できている。(1)データ寄付に関しては、独自開発した歴史地理自習のためのまちあるきスマホアプリを使用した後に、ユーザのGPS軌跡およびユーザが作成したUGC(User Generated Content;個人が生成した写真、テキスト、音声など)をオプトイン方式でユーザの意思でデータ寄付する枠組みの体系化、実現、実証実験を行うことができている。また、ユーザのデータ寄付に対するインセンティブを上げるために、GPS軌跡とUGCから簡単に自動的にマップ上のユーザ移動アニメーションを生成してユーザの行動履歴を分かりやすく鑑賞できる環境を実現した。(2)時空間情報管理に関しては、情報登録を地理空間軸と時間空間軸のそれぞれの空間インタフェースで登録でき、また情報利用のときには、アプリから地図と年表のそれぞれのインタフェースを介して情報を閲覧できる枠組みを実現した。(3)永続性に関しては、デジタル情報アーカイブと言えども、その本質は、人々がそれを使う機会が増え、人々の記憶に残り、そして地域の人々が地域の知と情報を語り、愛着を持つ状況を創り出すことが重要であるという観点から、地域の知と情報の永続性のエコシステムの体系化、実現、実証実験を行った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度、H30年度は本研究プロジェクトの最終年度であり、ほぼ計画どおりにプロジェクトを実施する予定である。具体的には、実応用を対象に実証実験を行い、本枠組みの健全性などを明らかにする。また、プロジェクトで提案した枠組みである、地域の知の時空間情報を、長期間でも共有・発展できる枠組みに関してホワイトペーパーを作成し、われわれの思想を広く共有できるように情報発信を積極的に行う。実現した本システムはだれでもが使えるように一般的な形式で公開する。
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