研究課題/領域番号 |
15H02797
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
桝井 文人 北見工業大学, 工学部, 准教授 (80324549)
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研究分担者 |
柳 等 北見工業大学, 工学部, 准教授 (60344553)
宮越 勝美 北見工業大学, 工学部, 准教授 (00142795)
松原 仁 公立はこだて未来大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50325883)
竹川 佳成 公立はこだて未来大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60467678)
山本 雅人 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (40292057)
伊藤 毅志 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (40262373)
河村 隆 信州大学, 繊維学部, 准教授 (70242675)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カーリング / 競技データ / 戦術支援 / 戦術要素 / スウィーピング / 人工知能 / ロボット / デジタルスコアブック |
研究実績の概要 |
本年度は,試合競技データの分析調査とカーリング戦術関連知識ベースの構築に力点をおき,(1)デジタルスコアブックの開発とこれを用いた試合情報の記録収集および共有環境の構築,(2)認知科学実験による競技者の判断情報の収集とその分析,(3)戦略による戦術判断アルゴリズムの設計と同アルゴリズムの実装,(4)スウィーピング力測定装置の開発とこれを用いたスウィーピング情報の収集,(5)デリバリーロボットの開発と実証(6)ストーン挙動測定センサーの開発,に取り組んだ. 特に,(1)に関しては,関係者からの関心を集め,平成27年度終了時点で日本代表を含めた国内10チームに利用されるに至っている.(2)および(3)に関しては,実験データの分析から得られた知見および設計アルゴリズムをデジタルカーリングシミュレータに組み込み,シミュレータ同士の対戦を実現した. 上記取り組み内容を発信するために,2015年に情報通信技術分野で権威ある国際学会IEEE主催による国際学会「IEEE Conference on Computational Intelligence and Games」においてカーリングセッションを設定・発表したほか,2015年に開催されたEC2015においてオリンピック選手を交えた招待パネル討論(「 カーリングを科学する~メダル獲得を支える情報機械技術~」)を行った.また,2015年に開催された国内最大のゲーム技術カンファレンスCEDEC2015において技術セミナー(「データ分析、人工知能、実践を結ぶスポーツ戦略支援~カーリングの科学研究の紹介~」)を開催し,関係者から大きな反響を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】記載順に述べると, (1)についてはほぼ実用段階に達し,同システムが収集した試合情報をネットワーククラウド上に共有する環境の試作と約400の公式試合情報データベース構築に成功した.さらに,試合情報解析によりチーム固有の特性や経験則を裏付ける客観的知見を得た.本システムは日本代表を含めた国内10チームが利用するに至っている.(2)については,競技中に発生し得るストーン配置図を提示した際に競技者が選択する戦術上最も有利と思われるショットの種類とその根拠の収集,競技中の映像を提示した際に競技者が示す視線情報の計測を行った.収集した情報を分析した結果,競技スキルと戦術選択の過程に興味深い相関が存在するという知見が得られた.(3)については,カーリング戦術選択のプロセスを不確定ゼロサムゲームと考え,膨大な探索空間を持つゲーム木を効率よく探索するための枝刈りや評価関数を実現し,デジタルカーリングにより有効性を確認した.(4)については,無線送信機を小型ケースに収納し,ブラシシャフトに取り付けることによって,選手の負担軽減ならびに測定時の操作性の大幅な改善を図った.Bluetooth方式で送信された検出信号をタブレットPCにより処理し,直ちに選手がスウィーピング力の波形や統計諸量を確認できるようになった.(5)については,デリバリーロボットの動作性改善に掛かる仕様変更と氷上のコンディションセンシングモデルの精緻化を行い,競技者との対戦実験を通して結果性能を確認した. 以上(1)~(5)の進展状況は研究計画とほぼ一致したものである. (6)については,当初予定していた競技者動作情報の収集が実験環境設定の制約のために見直しを迫られたため,新たに発案したものである.年度終了時点で一定の有効性が確認できており次年度の実験実施が期待でき,研究計画修正による影響を補える進展である.
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今後の研究の推進方策 |
【研究実績の概要】記載順に述べると,今後の研究の推進方策としては,基本的に当初研究計画に沿って進める予定である.以下,各分担テーマ毎の方策と全体的な連携について述べる. 今後の研究の推進方策としては,以下のように予定している.まず,テーマ(1)については試合情報データベースのクラウド共有環境の運用に取り組む.テーマ(2)については,実験データのより詳細な分析とデジタルカーリングへの応用に取り組む.テーマ(3)については設計した戦術選択アルゴリズムの精緻化に取り組む.テーマ(4)では,開発したスウィーピング力測定装置を用いたデータ収集に取り組み,テーマ(5)においては引き続きデリバリーロボットの改良と実証実験を実施する.テーマ(6)では,開発したストーン挙動測定センサーを用いてストーン挙動の測定に取り組む. 上記で得られた各種データを分析し,データ毎の特徴や傾向を見出すとともに,データ相互の関連性についても吟味する.さらに,試合情報データベースのクラウド環境を応用し,各種データを相互に関連付けて共有する手法の検討も行う.
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