研究課題/領域番号 |
15H02801
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福田 秀樹 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (30451892)
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研究分担者 |
宮島 利宏 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (20311631)
田中 潔 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (20345060)
柳本 大吾 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (40260517)
田中 義幸 八戸工業大学, 基礎教育研究センター, 准教授 (50396818)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生物海洋 |
研究実績の概要 |
本研究は東日本大震災に伴う大津波による被害から回復途上にある三陸沿岸部のアマモ場を対象とし、異なる回復段階にあるアマモ場に流入する河川起源の懸濁態有機炭素・窒素の沈降過程とアマモ場で新たに生産された有機態炭素・窒素さらに再生された無機態栄養塩類の移出過程に着目し、これらの過程と回復段階の変化に伴って変化するアマモ場の規模の関係を検討することで、アマモ場がその周辺に分布する砂質堆積物系などの生産力の低い生態系に与える影響を定量的に評価することを目的としている。 平成28年度も前年度と同様に夏季調査を冬季調査を実施したが、冬季調査では季節風による悪条件下で行わざるを得なかったため、砂質の巻き上りによる透明度の低下により、水中ビデオによるアマモの分布状況に対する調査と草体の採取が行えなかったことからこれらの年度内の実施を断念し、季節風が収まった平成29年4月に実施した。 これらの野外調査により、調査対象地域としている大槌湾根浜地区に隣接する砂防林より流入していた泥流が平成27年度秋季の復旧工事の終了と共に無くなって以降、アマモ場面積は急速に拡大し、その分布密度も増加傾向にあることが確認された。また鉛直混合が盛んになる冬季において再生された栄養塩類の窒素・リンの元素量比に震災前よりも窒素が過多となる傾向がみられることが明らかとなってきた。これらの結果は二件の学会発表として公表した。アマモ場内よりセジメントトラップにて採取した沈降粒子の主体は平成27年度の調査時と同様に依然として砂の寄与が体積的に高く、底質が不安定であることを示唆するものであった。アマモ場の回復は進行しているものの、まだその規模は震災前には及んでいないことから、今後も回復過程の追跡することでアマモ場の規模と底質の安定性・アマモ場内部の生物群集の活動と溶存態・懸濁物質の関係を明らかにしていくことを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
季節風の影響により平成28年度に計画されていた調査内容の一部を平成29年度に実施せざるを得なかったが、水温が十分に低くアマモの草体が水柱内に立ち上がる前の4月のうちにこれらの調査を実施できたことから、目的通りの調査は実施できたものできたものと考えている。平成28年度の冬季調査で採取した試料の分析は当初の計画でも平成29年度の前半に行うこととなっており、延期の伴う遅れは取り戻せたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は試料の採取・処理を行う予定であった東京大学大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センターの移転に伴う実験施設の閉鎖により実施できなかった平成29年度冬季調査を行い(本報告書の作成時点で既に実施済み)、得られた試料の分析並びに研究成果の取り纏めおよび公表に向けた準備を行う。
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