研究課題
亜硝酸ガス(HONO)は大気中の微量成分であり、その濃度は都市大気中でも数ppbv程度に過ぎない。しかし、HONOは日中光分解反応によってOHラジカルを放出し、多様な光化学反応を駆動するため、その起源や挙動を知ることは重要である。HONOの発生源には、自動車や工場の排気ガス、土壌からの放出などの直接排出と、大気中の窒素酸化物の気相均一反応や、エアロゾル表面や地表面における不均一反応に由来する二次生成起源が挙げられる。しかし、都市大気中のHONOの起源は未だに明らかにはなっておらず、その濃度の日周変化のメカニズムについても未だに議論がある。そこで、本研究では、近年定量化できるようになったHONOの三酸素同位体組成を指標に用いて、都市大気中のHONOの濃度および日周変化の原因を考察した。都市大気の観測は、札幌市および名古屋市で行った。1日の時間帯を6つに区分してHONOを捕集するために、自動切替バルブ付きのフィルターパック装置を作成した。捕集したHONOは超純水に亜硝酸イオンとして抽出した。この抽出液にアジ化水素を添加することで、亜硝酸を一酸化二窒素に還元し、さらに熱分解によって酸素分子に変化させ、連続フロー型の質量分析計に導入して三酸素同位体組成を定量した。大気中のHONOの三酸素同位体組成には大きな日周変動が見られた。三酸素同位体組成は日没直後からは減少し、22時に最小となった。日出に伴って徐々に増大し、午前10時に最大となった。直接排出のHONOは光化学反応過程を経由しないため、三酸素同位体組成は0‰と考えられるが、二次生成由来のHONOは大きな三酸素同位体組成を持つ二酸化窒素を経由するため、大きな値を示すはずである。したがって、HONOの三酸素同位体組成から、二次生成由来の寄与率は夜間より昼間の方が高く、夜間の大部分のHONOは直接排出由来であることが明らかになった。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Atmos. Chem. Phys.
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Limnology and Oceanography
巻: 63 ページ: S458~S476
10.1002/lno.10775
月刊海洋
http://biogeochem.has.env.nagoya-u.ac.jp