研究課題
溶存有機炭素(DOC)は陸域生態系の炭素循環プロセスの要であり,気候変動や温暖化と密接に関係する成分である。このため,モニタリング研究は世界各地で盛んに行われているが,その特性解析にはUV・蛍光・FTICR-MS分析などの特定成分をターゲットにした解析法が適用されているに過ぎない。しかし,特殊なパルスシーケンス(SPR-W5-WATERGATE)による1H NMR分析が利用できれば,希薄なDOCでも分子構造レベルでの特性解析が可能となる。本研究は,モニタリングレベルでの活用は困難とされてきたNMR分析法を主軸に従来法も併用して,気候変動や温暖化の影響が顕著である高緯度地域の湿地生態系を対象に,土壌―河川―沿岸海域にまたがるDOCの変遷プロセスを分子レベルで解明し,加えて,新たな炭素動態解析法の活用推進を提唱することを目的としている。本年度得られた研究成果は以下の通りである。1) SPR-W5-WATERGATE法による1H NMR分析を用いての微量かつ高感度な測定の最適化とルーチン化が達成された。2) 上記の手法で高緯度北極湿原から流出する河川水DOCのNMR特性を明らかにし,DOCの変遷プロセスを分子構造レベルで解析できることを示した。3) 北極と並ぶ高緯度地域である南極宗谷海岸露岩域にて採取した湖水試料について3D-EEM-PARAFAC分析とSUVA254の光学的データを取得し,DOC特性の多様性と類型化が見出された。3)海水塩濃度の1/100以下の一般的な淡水で難分解性DOCの分取法としてDEAEセファロースが有用であることを明らかにした。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
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