研究課題
本研究は、大気エアロゾルの気候への影響評価の高度化を主眼とし、A-Train衛星群搭載の2波長偏光ミー散乱ライダーCALIOPと中分解能撮像分光放射計MODISの観測データを用いた複合解析により、3種エアロゾル(大気汚染粒子、鉱物ダスト、海塩粒子)の全球3次元分布構造を明らかにする。そこで研究計画に沿って、平成27年度は以下の4項目を実施した。① 複合アルゴリズムの開発:CALIOPとMODISを同時活用して、3種エアロゾルの波長532nmでの消散係数の鉛直分布および気柱平均での粒径(モード半径)を推定するアルゴリズムを開発し、その性能について学会等で公表した。② エアロゾル微物理・光学モデルの構築:エアロゾル種推定で必要となる、3種エアロゾルの光学モデルの構築を進めた。地上観測ネットワークAERONETのスキャニング型サンフォトメーターで得られた10年以上にわたるエアロゾルの微物理特性(粒径分布や屈折率等)やそこから理論計算により得られる光学特性(ライダー比、一次散乱アルベド等)をクラスタリング手法で統計解析し、全球平均的なエアロゾル種毎の微物理・光学特性をモデル化した。本成果について、学会等で公表した。③ CALIOP/MODISデータの整備:研究計画に沿って、CALIOP搭載衛星が打ち上げられた2006年から現在までのCALIOPおよびMODISデータを集積し、CALIOP-MODISマッチアップデータの構築を進めた。④ 地上観測およびデータ整備:地上ライダーネットワークAD-Netによるライダー観測と地上放射観測ネットワークSKYNETによるスカイラジオメーター観測を継続して行い、様々な事例(大気汚染イベント、鉱物ダストの飛来など)に対する測定データ・及び解析データをデータセット化した。本ネットワーク観測によるエアロゾル解析に関する成果について、学会等で公表した。
2: おおむね順調に進展している
計画していた以下の4項目、①複合アルゴリズムの開発、②エアロゾル微物理・光学特性の構築、③衛星ライダー・分光放射計データの整備、④地上ネットワーク観測の継続およびデータ整備、全てに対し概ね順調に研究は進行しており、①、②および④に関する研究成果について、国際学術誌への投稿を目指し、論文作成を進めている。
現在までの研究進捗は良好であることから、研究計画や研究分担者の変更は予定しておらず、今後も研究計画に沿って実施していく。平成28年度は、平成27年度の研究成果を利用して以下4項目の研究を実施する。① 全球エアロゾル解析:開発した複合アルゴリズムおよびCALIOP単体アルゴリズムを用いた全球エアロゾル解析を実施する。② より詳細なエアロゾル微物理・光学特性の構築:エアロゾル微物理・光学モデルの詳細化を目指し、全球平均的なモデルだけではなく、地域毎(アジア、欧州など)にモデル化する。③ 地上ネットワーク観測の継続およびデータ整備:ライダーおよびスカイラジオメータによる地上ネットワーク観測を継続して行い、測定データおよび解析データを随時更新し、全球エアロゾル解析の検証およびエアロゾル微物理・光学モデルの詳細化に活用していく。④ エアロゾル推定範囲の拡張(アルゴリズムの発展):MODISデータの発展利用として、エアロゾル推定範囲の拡張手法を検討する。CALIOPは地上フットプリント70mの水平観測幅で衛星進行方向に沿って測定する。一方、MODISは、2300kmの水平観測幅を有す。開発した複合解析アルゴリズムでは、CALIOPとMODISの同期地点でのエアロゾル光学特性を推定するため、CALIOPの水平観測幅(70m)に縛られる。そこで、先行研究で開発された手法の改良も視野に入れ、水平方向の推定範囲を拡張する解析手法を検討し、複合アルゴリズムを更に発展させる。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件) 学会発表 (34件) (うち国際学会 14件、 招待講演 5件)
Journal of Geophysical Research
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