研究課題/領域番号 |
15H02810
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
和穎 朗太 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 上級研究員 (80456748)
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研究分担者 |
諸野 祐樹 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, グループリーダー代理 (30421845)
平舘 俊太郎 九州大学, 農学研究院, 教授 (60354099)
長尾 眞希 (浅野眞希) 筑波大学, 生命環境科学研究科, その他 (80453538)
浦本 豪一郎 高知大学, 海洋コア総合研究センター, 特任助教 (70612901)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 土壌炭素 / 炭素隔離 / 放射光分析 / 鉱物・有機物相互作用 |
研究実績の概要 |
●土壌が、火山灰土壌で8試料、非火山灰土壌(草原土壌、熱帯土壌、ポトゾル等)で8点が揃ったため、その変動要因の解析を進めた。全体として土壌粒子の比重増加に伴う土壌炭素年代および安定同位体比の有意な増加が検出された。この増加の説明因子として、活性鉄・アルミニウムとの化学的結合および微細鉱物による物理的保護作用が考えられるため、選択溶解法から得られるFe, Al濃度およびN2-BET法による比表面積や鉱物表面の有機物被覆インデックスを用いて、因子解析を行った。 ●また、典型的アロフェン質黒ボク土(Ap層)については、機械振とうによる分散後に行った比重分画とは別に、ナトリウム飽和+超音波処理による最大分散後に行った粒子のサイズ別分画から得られたサンプルの詳細な分析を進め、論文化した。具体的には、0.2-2ミクロメートル画分に存在する安定化した炭素および活性Fe, Alの大部分はナノサイズの金属・有機物複合体として存在することをSTXM-NEXAFSおよびSEM/TEMの分析等から明らかにし、「非晶質鉱物や活性Fe,Alが多い土壌ほど、炭素が蓄積する」という従来の経験則の背後にあるメカニズムの一端を解明した。 ●更に、米国研究者らと共同で、アメリカ農務省の土壌データベースを利用し、世界5500点の土壌断面サンプルの土壌炭素貯留量の規定因子を解析し、従来考えられていた粘土含量よりも活性鉄・アルミニウムが湿潤気候下の土壌(酸性土壌)では重要であり、交換態カルシウムが乾燥(アルカリ性)土壌では重要であることを突き止め論文化した。 ●団粒3次元構造のCTによる評価は、イメージ解析に膨大な時間がかかるため、新たな解析手法を模索した。 ●河川・海洋堆積物については、鉄と結合した有機炭素の挙動をまとめた論文を、共同研究者のメーン州立大Mayer教授と共に投稿したが、却下されたため対応を考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
● 堆積物の分析は遅れているものの、土壌有機物の安定化については成果が論文成果も2報出て、当初の予定以上に進んでいるため、総合して順調と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
●最終年度であり、興味深いデータが得られているため、論文化を急ぐ。上述の火山灰土壌および非火山灰土壌の解析結果から、火山灰土、非火山灰土で異なる安定化メカニズム、共通の安定化メカニズムについての論文準備を進める。 ●これに加え、これまで比重分画を行った土壌が計20サンプル程度あるため、これらの結果の総合的解釈を試みる。すべての土壌の比重画分に対してC-14分析や比表面積などの詳細分析は行ってはいないが、炭素・窒素濃度や選択溶解にようるFe, Al濃度データは得られている。これらのデータを基に、炭素、窒素や活性Fe, Alの各比重画分への分配や濃度分布と、気候条件、土壌タイプ、や植生タイプの関係を解析し、論文としてまとめる。 ●米国メーン州沖の大陸棚から0~20cmの深度別に採取した堆積物試料の分析が完了していないため、これを進める。表層土壌サンプルに比べ炭素・窒素濃度が低く、また炭酸塩(無機炭素)を含むため分析に時間がかかっているが、本年度の前半中にはこれを完了させ、これの論文化を行う。
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