研究課題/領域番号 |
15H02813
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
鈴木 淳 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 研究グループ長 (60344199)
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研究分担者 |
山野 博哉 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 研究センター長 (60332243)
新垣 誠司 九州大学, 理学研究院, 助教 (10452963)
林 正裕 公益財団法人海洋生物環境研究所, 実証試験場, 主査研究員 (20444870)
井口 亮 沖縄工業高等専門学校, 生物資源工学科, 助教 (50547502)
酒井 一彦 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (50153838)
高田 徳幸 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 機能化学研究部門, 主任研究員 (70357359)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地球温暖化 / サンゴ礁 |
研究実績の概要 |
日本周辺海域では、サンゴの北上が進行するなど、地球温暖化の影響による環境変動が顕在化している。本研究課題では、亜熱帯海域については、明瞭な年輪を持つハマサンゴ属のサンゴ骨格を用い、本州南方など温帯域では、卓越する枝状群体のミドリイシ類の骨格について、水温計としての利用法を開発し、環境変遷の復元にあたる。ミドリイシ水温計開発には、水産分野の専門技術の助けにより、従来に比べ格段に良好な状態でサンゴを飼育して、精密な環境制御下で形成された骨格を用いて、気候プロキシの検討を行い、気候変動研究の確度・精度向上を図る。
5段階(13℃~29℃)の調温水の掛け流しによる恒温水温を用いた温帯性ミドリイシ類の飼育実験が、2012年に海洋生物環境研究所において実施されており、研究課題の初年度は、この骨格分析から着手した。対象生物を養生水温23℃から、1日1℃のゆっくりとした昇温/降温による馴化が行なわれた。サンゴ類の光条件は、250 μmol m-2 s-1の昼夜12時間サイクルとして、対象生物へのストレスは十分に低いと考えられる。約6週間の飼育によって、スギノキミドリイシ (Acropora muricata) などの温帯サンゴ類でも約8%の骨格重量の増加が認められ、同位体比および元素分析に十分な試料が得られた。この試料について、骨格の酸素同位体比及びSr/Ca比に、明瞭な温度依存性が認められた。これらは、温帯性サンゴの水温計としての高い利用可能性を示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は、おおむね順調に進展している。 温帯性サンゴの飼育実験に関しては、各種条件下で成長した骨格試料の収集がかなり先行しており、課題採択直後から、酸素同位体比及びSr/Ca比等の分析に着手することができた。今後は、新たに実施する飼育実験に関して、様々なトラブルの発生が予測される。サンゴの場合には長期輸送による低温障害の発生により、実験に十分な試料が用意できない場合もある。また、実験期間中の機器トラブルにより水温調整機能が失われる事故も懸念される。年複数回の実験を準備し、契約職員を雇用して定期的な目視確認作業にあたるなど、実験トラブルに備える。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度以降は、対象とするサンゴ種を増やして、環境指標の特性把握を進める。沖縄、天草、串本、西伊豆からのミドリイシ類サンゴを検討する。並行して、分析項目の拡大と新規環境指標の発見にも努める。検討に追加する対象種としては、熱帯・亜熱帯域を代表するコユビミドリイシについて同様の手法を適用しつつ、検討を進める。その他の関連プロジェクトで飼育されたサンゴ・貝類試料も活用し、Sr/Ca比に加え、Mg/Ca比、U/Ca比等を分析して、特に温度と成長速度への共依存性を解析する(U/Ca比については海水pHの影響も検討する)。
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