研究課題
日本周辺海域では、サンゴの北上が進行するなど、地球温暖化の影響による環境変動が顕在化している。本研究課題では、サンゴ 骨格に注目して、過去100~200年間の変動を詳細に復元・検討を行なう。亜熱帯海域については、明瞭な年輪を 持つハマサンゴ属のサンゴ骨格を用い、本州南方など温帯域では、卓越する枝状群体のミドリイシ類の骨格につ いて、水温計としての利用法を開発し、環境変遷の復元にあたる。ミドリイシ水温計開発には、水産分野の専門 技術の助けにより、従来に比べ格段に良好な状態でサンゴを飼育して、精密な環境制御下で形成された骨格を用 いて、気候プロキシの検討を行い、気候変動研究の確度・精度向上を図る。新潟県柏崎市の海洋生物環境研究所・実証試験場及びで縄県本部町の琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設における飼育実験で得られた温帯性ミドリイシ類およびハマサンゴ類の骨格試料について、温度指標とされる骨格の酸素同位体比やSr/Ca比が、海水の炭酸系パラメータや成長速度に影響するかどうかを検討した。飼育期間中、定期採水試料について、水の酸素同位体比等を計測した。の酸素同位体比やSr/Ca比は、温度に関して明瞭な応答を示すが、炭酸系パラメータへの依存性は認められなかった。また、海水の炭素同位体比と有孔虫やサンゴ、その他の炭酸塩骨格の炭素同位体比の関係に注目した解析を進めた。海洋酸性化実験では、二酸化炭素分圧の増加に伴い、添加する二酸化炭素分圧の影響で、海水の溶存無機炭素の炭素同位体比が大きく低下する。有孔虫では、殻の炭素同位体比に海水の炭素同位体比への同調性に大きな差異があることが見出された。これは、石灰化機構の違いを示唆する。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は、当初予定していた飼育実験に実施できないものがあったが、先行して実施された飼育実験の骨格試料を用いるなど、年度当初の検討目的に見合う分析及び検討を実施できたものと考えている。
今後は、化石試料を扱う場合の検討についても進捗をはかる。初生的なあられ石から方解石への続成作用により各間接指標が受ける影響の程度について、顕微ラマン分光計測法や紫外線照射下のルミネッセンス像を活用して検討することを予定している。特に、完新世温暖期の沼サンゴ層(千葉県館山市)から採取された試料については、本研究課題で取り組んできた温帯性サンゴの気候プロキシの適用例として、重点的な分析を実施する。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
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