研究課題
H29年度は、つくばにおける連続観測と、落石岬、高山、波照間、南鳥島および昭和基地で保存容器に採取した試料の分析により、大気中アルゴン濃度の高精度観測を継続して行った。昭和基地における観測については、2016年1月から2018年1月に採取された試料を分析し、北半球とは逆位相のアルゴン濃度の季節変動を捉えることに成功した。実験上の問題として、波照間で行っているガラス容器とシリカコーティング金属容器との比較実験から、後者の分析結果に基づくアルゴン濃度季節変動の振幅が、ガラス容器の場合に比して半分以下になることが明らかになった。同時に測定した窒素の同位体比(成分分別の指標)や、大気輸送モデルにより行ったアルゴン濃度シミュレーション結果における季節変動がガラス容器分析に基づく結果に比して極端に小さいことから、コーティング金属容器に基づく結果がより確からしいことが示唆される。このような違いが現れる原因を究明し、ガラス容器のみで観測を行っている落石と南鳥島の結果を補正する手法の検討が必要がある。長期(6年間)の観測結果が得られているつくばおよび波照間の結果から得られたアルゴン濃度には、NOAAによる全海洋の貯熱量(0~2000 m深の全海洋積算データ)の年々変動と高い正の相関を示す年々変動が見られた。しかしながら、過去6年間で観測されたアルゴン濃度の経年増加量および年々変動量は、全海洋貯熱量の変動から予測される変動量より数倍大きな変動量となった。これらのことから、大気中アルゴン濃度は広域平均の海水温変動を反映していると考えられるものの、数年程度の短期間の変動を、そのままで全海洋全層の貯熱量の変動と結び付けるのは早計であり、海洋のどの程度の領域・深度の水温変動が、どの程度の期間の大気中アルゴン濃度変動に反映するのかについて、今後、大気海洋結合モデルを用いた評価が必要である。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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