研究実績の概要 |
電離放射線暴露などで生じるDNA二本鎖切断(DSB)損傷の修復過程では、非相同末端結合と相同組換えの主要な二機構から適切なものが選択的に開始され、修復の完了に至るが、この一連の過程においてゲノムDNAが形成するクロマチン構造がどのように再構成(リモデリング)されるか、その役割は不明であることから、本研究では放射線誘発DSB損傷修復機構において、DSB損傷検知、修復機構の選択、修復の進行および完了の各段階におけるクロマチンリモデリングの役割をそれぞれの代表制御因子MRE11, KU, RPAと相互作用する因子をプロテオミクス法で同定し、機能解析することにより、クロマチンリモデリングを通したDSB修復機構制御の全容を明らかにすることを目的としてる。 27年度研究では、DSB損傷初期過程、それに続くDNA修復の一つ、NHEJ系路で機能するヒストンリモデリング関連因子を同定するために、初期過程因子としてMRE11、NHEJ過程因子としてKU80, KU70をターゲットとし、これら抗体で免疫沈降後、沈降物を質量分析計で解析し、ターゲット因子とDSB損傷発生時に結合しうる候補因子の同定を試みた。MRE11とはヒストンシャペロンタンパク質、RNA metabolism、酸化ストレス応答に関わる候補因子が単離された。抗KU70抗体では同定できなかったが、KU80の場合にはNucleolin, FACT等クロマチンリモデリングに関わる因子、RNA metabolismに関わる候補タンパク質を同定できた。 さらにこれら因子がDNA損傷発生時の役割を検討する一次スクリーニング法として、クロマチン画分への集積のウエスタンブロット法による検討を行い、NBS1, RPA70, RAD51など放射線照射時にDNA修復タンパク質のクロマチン集積が確認でき、28年度以降の解析に用いる系が確立できた。
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