研究課題/領域番号 |
15H02819
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 純也 京都大学, 放射線生物研究センター, 准教授 (30301302)
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研究分担者 |
林 幾江 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (00346503)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | DNA損傷 / 放射線 / DNA修復 / クロマチン / クロマチンリモデリング |
研究実績の概要 |
電離放射線暴露などで生じるDNA二本鎖切断(DSB)損傷の修復過程では、NHEJとHRの主要な二機構から一つが選択され、修復の完了に至るが、この一連の過程においてクロマチンリモデリングが重要であることが報告されていることから、本研究では放射線誘発DSB損傷修復機構過程の進行・完了に関わるクロマチンリモデリング因子をプロテオミクス法で同定し、機能解析することにより、クロマチンリモデリングを通したDSB修復機構制御の全容を明らかにすることを目的としている。 28年度研究では、DNHEJ及びHR系路で機能するクロマチンリモデリング関連因子を、MRE11、Rad51、RPA70、KU80、Ligase IVをターゲットとした免疫沈降法・質量分析計解析し、候補因子の同定を試みた。MRE11とはヒストンシャペロンタンパク質、RNA metabolism、酸化ストレス応答に関わる候補因子、RPAではヒストン修飾関連因子、RNA metabolismにかかわるもの、DNA結合能を持つ因子が単離されたが、Rad51ではRNA結合能を持つもの、DNA損傷応答因子との相互作用が報告される因子が単離できた。一方、NHEJではKU80の場合にはNucleolin, FACT等クロマチンリモデリングに関わる因子、RNA metabolismに関わる候補タンパク質、を同定できた。しかし、Ligase IVでは因子同定はできなかった。 さらにこれら同定因子がDNA損傷発生時の役割を検討する一次スクリーニング法として、クロマチン画分への集積のウエスタンブロット法による検討を行って、DNA損傷応答に機能しうる候補因子の絞り込みを行い、そのいくつかについてはsiRNAノックダウン等でDNA損傷との関わりについて解析を進めつつある。29年度も引き続きこれら候補因子のDSB損傷応答での役割の解明を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射線で生じるDNA二本鎖切断損傷の一連の修復過程で、ゲノムDNAが構成する安定なクロマチン構造を、DNA修復の進行に伴ってどのように適切にリモデリングしていくか、そしてクロマチンリモデリングはゲノム安定性の維持への役割を明らかにするのが本研究の目的であり、28年度研究では、免疫沈降・質量分析計を用いた解析から、HR過程でMRE11とともにRPA70, Rad51についても結合因子候補を複数同定でき、NHEJ過程においてもその初期因子KU80と結合しうる因子を複数同定することができた。これらの因子の中にはヒストンリモデリングに機能する因子も複数含まれており、28年度解析ではDSB損傷応答に機能しうる候補因子の絞り込みができ、その一部についてはsiRNAの機能解析を開始することができている。以上の理由から、研究計画は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
28年度研究で免疫沈降・質量分析計による結合因子の解析系を用いてDSB修復過程への関与が考えられるクロマチンリモデリング等関連因子の同定が進んでおり、これらから候補因子の絞り込みを進んでいることから、29年度ではそれら候補因子の機能、特にDSB修復・クロマチンリモデリングへの関与をsiRNAを用い、DNA損傷応答過程の様々なマーカーを用いて解析を進める予定である。このような方針を進めることにより、本研究課題の目的を達成できると考えている。
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