研究課題/領域番号 |
15H02820
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西條 将文 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (90221986)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヌクレオチド除去修復 / コケイン症候群 / 紫外線 / 紫外線高感受性症候群 / ユビキチン化 / SUMO化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、転写と共役したヌクレオチド除去修復(TC-NER)の分子機構を解明することであり、平成27年度は以下の研究成果が得られた。 1. CSBのC末端30アミノ酸残基がTC-NERに必須であり、欠損するとRNAポリメラーゼIIと結合できなくなることを明らかにした。また、紫外線照射後にCSBがSUMO化修飾を受けることを見いだした。CSBがSUMO化されないと紫外線照射後のRNA合成の回復が見られなくなることから、SUMO化がTC-NERにおいて重要な役割を担うことを初めて明らかにした。 2. XPGがTFIIHと相互作用して転写伸長に関与し、XPG遺伝子の変異によるコケイン症候群の患者由来細胞ではXPG-TFIIHが転写伸長部位に集まらないことを明らかにした。これらの結果より、転写伸長の異常がコケイン症候群患者の病態の一部を説明できると考えられた。 3. UVSSAの欠失変異体を作製し、CSAならびにUSP7との結合に必要な領域を決定した。これらの領域を欠失すると細胞は紫外線高感受性になり紫外線照射後のRNA合成の回復が見られなくなることから、UVSSAとCSA, USP7の結合がTC-NERに重要であることが明らかになった。USP7と結合できないUVSSAの1アミノ酸置換体を作製したところ、この変異UVSSAは細胞内でプロテアソームによる分解を受けやすくなることから、USP7の脱ユビキチン活性によりUVSSAは分解から保護される可能性が示された。また、CSAやUSP7との結合領域ではないUVSSAのC末端領域を欠損させてもTC-NERに異常がみられることから、この領域が新たな機能を持つことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. RNAポリメラーゼII, TC-NER因子の機能解析:平成27年度はCSBとUVSSAについて主に解析が進んだが、RNAポリメラーゼIIとCSAについても実験を行っており結果を得つつある。おおむね順調に進展している。 2. TC-NER因子間の相互作用の解析:UVSSAと他の因子との相互作用の意義については研究がかなり進展した。また、CSAについても変異体を作製し解析中である。損傷部位で停止したRNAポリメラーゼIIへのTC-NER因子の相互作用を解析するためには多量のRNAポリメラーゼIIが必要であり、精製を進めている。CSA, CSB, UVSSAについては精製サンプルが得られている。おおむね順調に進展している。 3. Cell-free TC-NER系の構築:細胞抽出液中の修復因子は調製過程でロスしておらず、量的には十分であると考えられた。その他の要素について、何か欠けているものがないか試行錯誤している。計画の当初より、系の構築の突破口を見つけるのに時間がかかることが予想されており、想定の範囲内である。
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今後の研究の推進方策 |
RNAポリメラーゼII, TC-NER因子の機能解析とTC-NER因子間の相互作用の解析については、個々の解析結果がそれ以外の部分と関連してくるので、平成27年度に得られた結果をフィードバックして研究を進展させる。特に、CSBのSUMO化欠損変異体を発現する細胞とRNAポリメラーゼIIのユビキチン化欠損変異体を発現する細胞で解析結果が一部共通しているようなので、SUMO化とユビキチン化の関連についても合わせて検討する。また、SUMO化がタンパク質間相互作用に関連する可能性についても検討する。平成27年度の結果より、USP7の脱ユビキチン化活性がいくつかのTC-NER因子の安定性に寄与することがわかってきたので、USP7がどのようにTC-NERに関与しているかについての解析も開始する。 Cell-free TC-NER系の構築については、当初の計画にあったユビキチン化だけでなく、SUMO化についても検討する必要が出てきた。ユビキチン、SUMOとも低分子量であり、細胞抽出液の調製過程で欠落している可能性が高い。また、これらの修飾反応に必要な酵素の量や活性について細胞抽出液中で調べ、ユビキチン化やSUMO化が起こるような反応条件で検討する必要がある。
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