研究実績の概要 |
本研究の目的は、転写と共役したヌクレオチド除去修復(TC-NER)の分子機構を解明することであり、本年度は以下の研究成果が得られた。 1. UV照射後のユビキチン化が低下するPol II変異体を発現する細胞では、UVによる転写の低下は回復しないが、損傷の除去は正常細胞とほとんど差がみられなかった。また、NER因子との相互作用にも変化がなかった。この細胞では転写のリスタートに異常がありその過程でユビキチン化が重要な役割を担っていることが示唆された。 2. UVSSAのC末端側には機能未知ドメインDUF2043が存在し、このドメインを含むC末端を欠失させるとUV高感受性となった。更に、DUF2043を残してそれ以降のC末端を欠失させてもUV高感受性となった。これらの結果より、DUF2043とC末端領域がTC-NERに重要であることが明らかになった。UVSSAはUSP7, CSAと結合するが、USP7と複合体を形成したままCSAと結合できることがわかった。 3. SUMO化部位変異CSBは、Pol II, CSAとの相互作用が低下していることがわかった。また、このCSB変異体を発現する細胞およびSUMO化E2であるUbc9をノックダウンした細胞では、Pol IIのUV照射後のユビキチン化が低下していた。CSBのSUMO化がTC-NER因子との相互作用ならびにPol IIのユビキチン化に関与すると考えられた。 4. CSA複合体はユビキチンリガーゼ活性を持つが、変異ユビキチンを用いて重合特異性を調べたところユビキチンの48番目のリジン残基以外でも重合可能であることがわかった。コケイン症候群患者由来のミスセンス変異で分子構造に影響を与えないと推測されるCSA変異体7種類をCSA欠損細胞で発現させて調べたところ、いずれもDDB1との結合がみられないか低下しており、複合体の形成不全がTC-NER欠損の原因と考えられた。
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