研究課題/領域番号 |
15H02821
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田代 聡 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (20243610)
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研究分担者 |
堀越 保則 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (00719429)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 放射線被ばく / 損傷ゲノム / 細胞核構造 / ゲノム修復 / 染色体異常 |
研究実績の概要 |
放射線被ばくにより染色体異常がどのようなしくみで形成されるか、という本質的な疑問については、未だに未解明のままである。さらに、低線量被ばくでも、高線量被ばくと同じしくみによる染色体異常を形成するのか?などの疑問についても未だ明確な回答はない。我々は、紫外線レーザーを用いて放射線障害に特徴的なDNA二本鎖切断を誘導する紫外線マイクロ照射法を開発し、放射線誘発核内ドメインの形成制御機構の解明に取り組んできた。最近、従来の顕微鏡の数倍の解像度を持つ超解像顕微鏡が開発された。超解像顕微鏡に紫外線マイクロ照射法が可能な装備を備えた新しいシステムを用いることで、放射線誘発核内ドメインの超微細構造の解析が可能となる。また、次世代シーケンサーを用いることで、特定の染色体DNA領域の位置関係を分子細胞遺伝学的に解析することが可能となってきた。 本研究では、超解像顕微鏡を用いた放射線誘発核内ドメインの動的構造解析を行ったところ、放射線照射細胞では代表的な放射線誘発核内ドメインとして知られているRAD51フォーカスの形が変わること、損傷ゲノムの一部はRAD51がもともと集積していた場所に移動すること、などを明らかにすることができた。また、生化学的アプローチでは、損傷シグナル因子ATMキナーゼによるクロマチン再構成因子複合体の活性制御により、損傷クロマチンへの適切なRAD51の結合を調節していることを明らかにした。さらに、RAD51タンパク質複合体に含まれる細胞核構造構築に関連する因子が、RAD51の機能制御を介して染色体異常形成の抑制に関与していることを明らかにし、論文発表している。さらに、本年度は染色体構造異常の形成に関与するクロマチン再構成因子複合体について、ATMキナーゼによる損傷依存的なリン酸化による活性制御を受ける構成因子を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
染色体異常形成に関与するゲノム修復因子とその分子機構を検討するために、ゲノム修復に関与するクロマチン再構成因子複合体の構成因子をはじめ、ATM、ATR、RAD51やSUMO化修飾酵素などゲノム修復に関連する蛋白質について薬剤やsiRNAを用いた機能抑制を行い、染色体異常形成への影響を検討した結果、染色体転座形成に関わるクロマチン再構成因子複合体の構成因子を同定し、さらに損傷依存的なリン酸化による活性制御機構を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
正常ヒト培養細胞について、放射線誘発核内ドメインに結合する染色体DNA領域を3C技術とγH2AXやRAD51などの抗体を用いたクロマチン免疫沈降法と組み合わせることにより定量的に解析する。RAD51蛋白質複合体の構成因子につ いてsiRNAを用いた発現抑制や阻害剤による機能抑制した細胞について、同様の解析を施行することにより、染色体構造異常の形成へのゲノム修復機構の関与について検討する。
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