研究課題/領域番号 |
15H02823
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
横谷 明徳 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主席 (10354987)
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研究分担者 |
秋光 信佳 東京大学, 学内共同利用施設等, 教授 (40294962)
岡 壽崇 東北大学, 学内共同利用施設等, 助教 (70339745)
鵜飼 正敏 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80192508)
渡辺 立子 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (10360439)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | クラスターDNA損傷 / プラスミド / mCherry / DNA水和水 / 軟X線 / 酸素K殻吸収端 / SPring-8 |
研究実績の概要 |
本研究の目的の一つである、実際に放射線照射して生成させたクラスターDNAを損傷非照射の動物培養細胞中に導入する手法を構築するため、クローニングベクターであるプラスミドDNAから蛍光タンパク質(mCherry)をコードする遺伝子部分を切り出し、これにX線を照射する実験プロトコルは確立した。さらに照射したmCherry 遺伝子をDNAのプラスミド再結合する実験系の構築を試みたが、再結合プラスミドの回収効率が悪くライゲーションの条件など実験方法を再検討する必要がある。 一方、DNA損傷誘発に果たす水和水の役割を明らかにするため、DNAの骨格を形成するデオキシリボース分子の薄膜に対し、真空チャンバー中で僅かな水蒸気を導入することで一層程度の水和水が吸着した試料を作成した。この試料に対してSPring-8から得られる酸素のK殻吸収端の高輝度軟X線を照射し、生成した脱離イオンを観測した。その結果、水和水が無い場合と比較すると水和水が結合することにより、明らかにデオキシリボース分子の分解が抑制される一方、水由来のH3O+イオンが新たに生成することを見出した。また、軟X線照射したDNA薄膜試料を塩基除去修復酵素で処理することで塩基損傷を鎖切断に変換して定量することを試みたが、DNAの構成元素である酸素、窒素、炭素などを含むTrisなど緩衝液塩を含まない試料は、それ自体が不安定で非照射の場合でも30-40%の鎖切断が入ってしまうことが明らかになった。今後は、NaClなどを添加することにより、安定なDNA試料の作成を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、新しい実験に関する方法や条件の検討を行ってきた。実験条件についてはほぼ構築することができたが、一部の試料作成については再考する必要がある。今後、これらについて継続して条件検討を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
懸案となっている、動物培養細胞への照射DNA導入のための試料調製法について早急に検討を進めるとともに、水和DNA塩基に対する軟X線照射と生じたラジカルのESR法による観測を試みる。同時に、水和水層におけるラジカル移動を考慮した、新しいモンテカルロトラック構造シミュレーションとDNA損傷のクラスター化収率の解析を進める。
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