研究課題/領域番号 |
15H02824
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
今岡 達彦 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線影響研究部, チームリーダー(定常) (40356134)
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研究分担者 |
真下 知士 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (80397554)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 生物影響 / 発がん / 改変ラット |
研究実績の概要 |
本研究は、低線量放射線の影響評価に生物学的知見を取り入れて改善するために有用な科学的知見を創出することを目指す。そのため、放射線が誘発した突然変異を標識して腫瘍ができるまで追跡できるデバイスを内蔵した動物システムを作製することを目標とし、これに必要な要素技術の開発を推進していく。従来、放射線被ばくに関連するがんリスクの増加の大きさを推定するためには、放射線が最初に作った遺伝子変異の数とがんリスク増加との間に直線的な関係があるとの仮定に基づいて、線量とがんリスクの間にも直線的関係があるというモデルが用いられてきた。本研究の目指すシステムは、このようなモデルの妥当性を生物学的観点から検討するために有用である。 本年度は、作製済みの遺伝子改変ラットのがんにおけるがん抑制遺伝子の解析系として、一塩基置換を定量的に検出するプライマーとプローブを作製して、定量的にがん抑制遺伝子の状態を検出する系を作製した。また、このラットを用いた放射線発がん実験を継続し、腫瘍の発生が見られた個体の解剖と病変の採取、保存、病理標本作製、診断を進めた。 新規遺伝子改変ラットの作製については、ノックインの方法を変更するため、新規手法の検討を実施し、成功を見たため、ノックインラットの作製(インジェクション、胚移植、遺伝子改変のチェック)を実施した。産まれたラットのうち1匹で、初めて、目的のノックイン遺伝子の発現が見られた。しかし、生殖可能に至る前に死亡したため、継続的に作製を再開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
既存モデルの放射線照射後に発生した腫瘍の解析については、予想されたよりも腫瘍の発生が遅かったため、解析に時間がかかっている。最終年度に向けて解析を加速する予定である。改変ラット作製については、得られたノックインラットが死亡しやすい表現型を持つという新たな課題に直面したため、対応を検討している。いずれも予期しない要因による遅れであるが、対応可能な範囲内であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
既存遺伝子改変ラットモデルの発がん実験の結果をまとめるとともに、同モデルの腫瘍におけるがん抑制遺伝子の状態を解析して、本モデルが目的とするラットシステムの基本形として使用可能かどうか検討する。また、新規改変ラット作製のためのノックイン実験を継続する。ラットの作製に成功した場合、ラットの清浄化、研究代表者の施設への輸送、繁殖、コロニー拡大、発がん実験の準備を行い、今後の研究につなげる。
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