研究課題
本研究は、放射線ががん化させた細胞を可視化することを目指し、がん抑制遺伝子変異のヘテロ接合体の発がんモデル動物を基本形として、2種の蛍光タンパクを野生型アリル及び変異アリルの近傍にノックインすることで、野生型アリルが欠失し変異アリルが保持された細胞を蛍光の変化に基づいて検出するラットシステムを確立するために必要な要素技術を開発している。本年度は、これまでに作成済みの遺伝子改変ラットの発がん実験を進行しつつ結果をまとめた。乳がん高感受性系統において、がん抑制遺伝子の変異をヘテロ接合性に有する遺伝子改変モデルラットでは、幼若期または成体期に放射線を照射した後、いずれの場合も乳がん発生率が野生型ラットより高い傾向が見られたが、その差は有意ではなかった。両群で発生率の差が最も大きい期間に注目して、この期間に発生した腫瘍におけるがん抑制遺伝子(改変遺伝子の正常な対立遺伝子)の状態を解析したところ、腫瘍において正常遺伝子が欠失している証拠は得られなかった。発がん化学物質を成体期に投与した場合や、乳がん抵抗性ラットとの交雑系を作製して放射線照射を成体期に行った場合も、野生型ラットと改変ラットの乳がん発生率に有意差は見られなかった。これらの結果から、本モデルは、目的とするラットシステムの基本形として使用するには不向きであると考えられた。一方、研究分担者において新規改変ラット作製のためのノックイン実験を行い、ガイドRNA等のデザインを変更して受精卵へのインジェクション、胚移植、遺伝子改変のチェックを年度の終盤まで継続したところ、最終的にノックインした蛍光タンパク質コンストラクトを有する個体の作出に成功した。以上のように、1系統のラットについて、放射線ががん化させた細胞の可視化に使用できるかどうかを評価し終えた。加えて、可視化に使用できる可能性を持つ新たなラットを作製することできた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019
すべて 学会発表 (4件)